プロジェクトの実行形態は、単純に考えると、ライン組織で行う場合と、横断組織で行う場合がある。
ライン組織でプロジェクトを行う場合のメリットは
・技術をはじめとするノウハウの移転がしやすい
・組織運用(人材活用)が合理的にできる
の2点である。ところが、この2点は、裏返しに見ると、デメリットになることがある。つまり、
・従来からのやり方にとらわれる
・じっくりと業務に取り組むことができない
というデメリットをもたらす。さらにこれを違う方向に裏返してみよう。つまり、
・新しいやり方を積極的に採用できる
・ひとつの業務にじっくりと取り組むことができる
となる。これは、横断組織(プロジェクト)で業務を行う場合のメリットになる。そして、さらにこれを裏返すと
・経験が活かされない可能性がある
・ひとつの仕事への従事期間が長くなり、適材適所が難しくなる
となる。これが横断組織で仕事を行う場合のデメリットである。このように、それぞれ、一長一短である。この点をまず認識しておきたい。その上で、如何に長所を活かして、短所を消していくかが組織プロセスを設計する上でのポイントになる。
◆ラインでプロジェクトを実施する場合の組織プロセス
まず、ライン組織でプロジェクトを行う場合について考えてみよう。
製品開発や、システム開発などではこの形態がもっとも多い。このケースでは、プロジェクトの間で技術やマーケティングのノウハウを移転しながら、プロジェクトのコストやリソースを全体として最適化し、収益を最適化することがポイントになる。ライン組織は業績責任を持つので、プロジェクトをそのような視点から捉える。たとえば、ある部門(ライン組織)にAとBというプロジェクトがあったとしよう。両方が順調にいけば問題ない。ところが、Aが遅れてきた。このときに、どのような判断をするのかはライン組織としてのプロジェクトの優先順位にゆだねられる。
この場合、プロジェクトのガバナンスはプロジェクトには降りない。権限委譲をすることはあっても、ガバナンスはラインの残る。このような場合には、ラインマネジャーがプログラムマネジャー、あるいは、マルチプロジェクトマネジャーとしてその組織のプロジェクトを指揮する。同時に、プログラムのスコープの調整、プログラムのリスクへの対応、プログラムのコミュニケーションのマネジメントなどを行うことになる。
まず、指揮については、各プロジェクトマネジャーの任命、権限の決定を行うと同時に、各種のマネジメントに対するマネジメントの方針を打ち出し、その方針にのとったプロジェクトマネジメントの実施を推進していく。その中で、全体的な視点からのマネジメントが必要になる部分が、スコープ、リスク、コミュニケーションの3つである。この3つについては、プロジェクトで簡潔せず、あるプロジェクトで起こったことが別のプロジェクトに大きく影響をする可能性がある。
まず、スコープについては、プログラムの目的達成のためにはプログラムのスコープを調整する必要があり、プログラムのスコープを達成するためには、各プロジェクトの状況を見ながら、スコープの調整をしていく必要がある。たとえば、ラインナップ開発のプログラムにおいては、ラインナップとして売り上げ目標が設定され、その達成がプログラムの目的になる。ところが、あるプロジェクトで何らかの理由によりトラブルが発生した場合には、別のプロジェクトの目標を高くして、その目標のために機能を拡張するといったスコープの調整が必要になる可能性がある。
次に、リスクについては、あるプロジェクトのリスクがプログラム内の別のプロジェクトに影響を与える可能性がある。たとえば、あるプロジェクトに要員のリスクがあったとすれば、それは(コンティジェンシー計画によっては)別のプロジェクトのリスクになる可能性もある。そのように考えると、各プロジェクトとは別に、プログラムとしてリスクを最小化し、リスク対策を最適化する必要がある。
3番目のコミュニケーションについては、上のスコープやリリスクのマネジメントのために必要なコミュニケーションをプログラムとして計画していく必要がある。
以上が、ラインでプロジェクトを実施する場合の、プロジェクトマネジメントの組織プロセスということになる。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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