◆はじめに
プロジェクトマネジメントが成熟した状況とはどういう状況なのか?
ずっと議論してきたこの問題を、今回は別の視点から考えておきたい。
第2回から議論してきた成熟度の議論は、組織側の視点からの議論である。PMOとしてはこれで十分だと思うが、組織側からの一方的な視点で議論していることが、成熟度の議論がもう一つわかりにくい理由の一つでもある。そこで、もう一つの視点として、プロジェクト側の視点から、プロジェクトが成熟するというのはどういうことかという議論を試みてみたい。
◆プロジェクト側からみたプロジェクトマネジメントの成熟
プロジェクト側からみてプロジェクトマネジメントの組織成熟度が高い状況というのは、3つのポイントがある。
一つ目は無理な目標設定がされないこと。例えば納期だとか予算において、適切なハードルの設定がされることだ。ここでコメントしておきたいのは、いくらがんばっても達成できる見込みの無いようなプロジェクト目標を、責任を問わないという条件で設定しているような組織がある。つまり、表向きの目標と裏の目標を使い分けているわけだが、これは論外である。
何が言いたいかというと、組織のプロジェクトに対するアカウンタビリティが高いことだ。つまり、組織が目標を与えた根拠をきちんと説明することができるというのが二番目のポイントだといえる。
さらに、この根拠の中には前提条件が含まれる。例えば、組織からプロジェクトへリソースの共有をタイムリーに行うといったことだが、三番目は前提条件をきちんと守る組織であるということだ。ここでもコメントしたいことがある。前提条件を明確にしない組織がある。これはアカウンタビリティという視点からも問題があるし、そもそも、成熟度ということであれば、何もコミットしていないということで、最低の組織だと言ってもよいだろう。
◆より、根源的な問題
ここでもう少し根源的な問題に触れたい。それは、プロジェクトマネジメントがきちんとできるということはどういうことかだ。多くの組織はプロジェクトマネジメントがきちんとできればプロジェクトはうまく行くと考えている。もっといえば、プロジェクトをうまく行うためにプロジェクトマネジメントが必要だと考えている。
このこと自体が間違えだとはいえないが、これを成熟度と結びつけて考えるのは早計である。むしろ、成熟度という視点から言えば、プロジェクトマネジメントでプロジェクトがうまくいくということに対して、懐疑的な方が成熟度が高いといえるのではないかと思える。
◆プロジェクトロジスティックがきちんとできているか?
つまり、プロジェクトマネジメントという武器を与え、戦場に出して、後は武器を使って戦場で何とかしというスタイルというのは成熟しているとはいえない。戦場で如何に戦えるかは、ロジスティック(兵站)に大きく依存する。
江畑謙介「軍事とロジスティクス」、日経BP社(2008)
によると兵站とは
戦闘部隊の後方にあって軍隊の戦闘力を維持し継続的に作戦行動を可能とする機能や活動、組織の全般を指す。一般的に兵器・燃料・食料などを戦闘部隊へ届ける補給、兵器を含む機械類の整備と修理、将兵の医療、拠点設営、兵站線の確保、各種物品の取得と保有・管理、役務提供等を包括的に指す
と定義される。
プロジェクトに対して、成熟度が高いというのは、ロジスティクスがうまくできているということである。この本の中で、江畑謙介氏がおもしろい指摘をしている。それは、「ロジスティクスは後方支援ではない」という指摘だ。ロジスティクスが部隊を動かしているというのだ。
組織がプロジェクト(マネジメント)を動かす。ここが成熟のポイントだといえる。
これで、何ができるのか?戦略的なプロジェクトマネジメントが可能になってくる。
この議論は次回。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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