第84回 組織はイノベーションに対して何をすべきか(2015.10.07)
◆iPhoneは組織の成果!?
日本でもだいぶイノベーションは組織の問題だという認識がされるようになってきた。以前のように、放っておけば、やりたい人がやってくれるという認識から脱しつつあるのは進歩である。では、組織は何をすべきなのだろうか。今回はこの問題について考えてみたい。
日本ではまだ出版されていないが、今年、ジョブズの新しい伝記「Becoming Steve Jobs」が出版された。この本は、ジョブズの伝説的なイメージを変えるものとして話題になっている。その中の一つにiPhoneを作ったときの話が出てくる。iPhoneを市場に投入したとき、ジョブズは独立系の開発業者がiPhone向けのソフトウェアを作ることを禁止しようとした。これに対して、経営チームはジョブズに考えを改めるように説得した。
結果はご存じのとおり、さまざまな業者がアプリ開発に参入し、卓越したアプリが登場してきたことが、iPhoneの成功要因の一つになった。実は、ジョブズの態度は、Macintoshを市場に投入したときと同じものだった。30年経っても考えが変わっていないのは立派だが、競争初期のジョブズの判断が今のWindowsPCとのシェアの差になっているといっても過言ではないだろう。そう考えると、同じ過ちを繰り返すところだったが、逆にいえば、iPhoneはジョブズ一人(や開発エンジニア)の成果ではなく、組織としての成果だといえる。
◆イノベーションにおける組織
そのように考えると、イノベーションにおいて、イノベーター(イノベーションの実施部隊)だけではなく、そのほかのステークホルダーにはそれぞれの役割があり、その役割がきちんと遂行されたときにはじめてイノベーションが実現されると考えるのが自然であろう。
イノベーションに強く影響を与えそうなロールには
・マネジャー
・組織
・経営層
の3つがある。この中で一般に重要性が高いといわれるのは経営層である。経営層が理解すればイノベーションは成功する可能性が高くなると言われる。経営層が理解を示せば、足を引っ張る人たちが出にくくなるという意味では現実的な話で分からなくもないが、それだけでは不十分だ。
◆イノベーションにおけるマネジャーの役割
ポイントになるのは、マネジャーである。
マネジャーがイノベーター同様にそのイノベーションに熱意を持てるかどうかが、イノベーターの熱意と同様に重要である。マネジャーの役割はイノベーションについて社内を巻き込むことである。経営層を説得し、他部門に協力を求める。イノベーションは明確なビジネスケースが書ける活動ではないので、周囲をその気にさせるのは当事者の覚悟と熱意しかないといってもいいだろう。
さらにもう一つの役割は事業観点からのアドバイスをすることだ。
ジョブズの例でいえば、ジョブズ自身が経営チームにいたため、アドバイスを与えたのは経営チームだったが、一般的に考えるとマネジャーのもう一つの役割はアドバイスを与えることだろう。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
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