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洞察とは、新しいつながりを見抜くことであり、概念と形象の往復、特に、直観/論理、大局/分析、長期/短期の3つの軸の往復が重要である

第3回 コンセプチュアルなプロジェクトマネジャーは常に洞察する(2015.11.27)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆洞察とは

よいプロジェクトマネジャーと普通のプロジェクトマネジャーの差は、洞察力にあるといっても過言ではない。今回は洞察について考えてみたい。

まず、最初に定義を明確にしておこう。洞察とは

それまで分からなかった新しいつながりを発見し、新しい世界を見出すこと。言い換えると新しいつながりを「見抜く」こと

である。


◆洞察のプロセス

一般的に洞察のプロセスは、専門能力のある分野において

(1)問題を意識化する
(2)ひらめく
(3)アイデアの有効性や商業的な可能性を確認する

といったものだと考えられている。このように考えると、まず、如何に新しいつながりを発見できるか、つまり、ひらめく部分が問題になる。端的にいえばこの部分は直観である。ここで直感ではなく直観と書いているのは、経験に基づいてひらめくという意味で、ここでは洞察をそのように考えている。

プロジェクトマネジャーとして業務経験が不可欠だとは思わないが、洞察という観点からすれば、業務経験が欠かせないと考えている。ただし、経験にはプロジェクトマネジャーとしての経験という側面もあり、その点も併せて経験だと考えた方がよいだろう。


◆洞察力を高めるには

では、新しいつながりを見つける方法にはどのようなものがあるのだろか。ここでは4つについて考えてみたい。

(A)概念と形象を行き来する思考
(B)立ち位置を変えて目的を考える
(C)常に前提を意識する
(D)状況をストーリーにしてみる


◆コンセプチュアル思考を行う

まず、最初は少し抽象的であるが、概念と形象を行き来するコンセプチュアル思考を心がけることだ。特に重要なのは、直観/論理、大局/分析、長期/短期の3つの軸を使うことである。

まず、直観/論理の軸からは「直観的に感じたこと(仮説)が論理的に説明できれば洞察が生まれる」ことが多い。次に、大局/分析からは、「大雑把にイメージしたことを、分析的に説明できれば洞察が生まれる」ことが多い。三番目の長期/短期からは、「現在から未来を考える、未来から現在や過去を考えると洞察が生まれる」ことが多い。


◆立ち位置を変えて目的を考える

次に、立ち位置を変えて、目的を考えてみることも有効である。今、行っているプロジェクトの目的は何かと考えたときに、プロジェクトの立場で考えれば、製品やシステムといった成果物を作り上げることであることが多い。しかし、経営者の立場になって考えてみると製品を使って何を実現するか、システムを作って何をしたいのかが目的であることがほとんどである。

また、顧客の立場で考えてみるとはやり、製品を使って何をしたいのかが目的であることがほとんどである。製品を購入することが目的ではなく、製品を購入すること以外にも目的を実現する方法があることが多い。

このように、立場を変えて目的を考えてみると、と自身の本来の立場では見えないことがいろいろと見えてきて、そこからひらめきが生まれることが多い。


◆前提に注意を払う

三番目に注目したいのが、前提だ。論理には条件と結論を結び付けている前提がある。たとえば、風が吹けば桶屋が儲かるという論理があるが、この中にはずいぶん、確率の薄い論理がある。「砂埃が目に入ると失明する」、「盲人は三味線で生計を立てる」といった前提である。特に最近は正解とは限らない論理を取らざるを得ないケースが増えており、そのような前提でその論理をいうのかが問題になるケースが増えている。

洞察とは思考の前提、行動の前提など、前提を探すことだといってもよいだろう。しかし、洞察として重要なことは、なぜそのような前提を置くのかで、それを考えることが洞察の基本だといえる。


◆状況をストーリーにしてみる

四番目はこれまでの3つとは少し違うが状況をストーリーにしてみることである。ブレーンストーミング的な議論では、すべてを書きだそうとするが、実際にはそれは難しい。そこで、スキャンパー質問のような思考を拡散するツールを使って、思考を拡張しようとするが、この代わりにストーリーを使うことをお薦めしたい。

イメージとしては、ブレーンストーミングや箇条書きで出てくる断片的な思考結果を結び付けていくことによって、結果の間にあるものをストーリーとして書きだせるイメージである。


◆アイデアの有効性の確認

洞察に必要なひらめきを起こすためには、以上の4つの方法がお薦めである。ひらめきを洞察にしていくには、「アイデアの有効性やビジネス的な可能性を確認する」という最後のステップも重要である。

ただし、このステップは比較的、論理的な思考に近い。論理的でなくては、納得が得られず、結果として、アイデアとして有効であるという認識が起こらず、ビジネスに結びついていかないからだ。

さらにいえば、ここで自分の専門分野と関係のない分野においてどれだけ考えることができるかが洞察力である。これには、類推のような手法が必要になるが、またの機会に説明したい。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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