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組織は2:6:2の比率で、できる人が2割と言われ、6割の人がコンセプチュアルスキルを身につけることにより、上位2割に近づくことで、詳細な標準が不要になる。そして、自立した活動とともに、パフォーマンスが向上する

第9話:実行力の源泉はコンセプチュアルスキルにあり(2013.12.24)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆2つのプロジェクトマネジメント標準

プロジェクトマネジメントの標準というと米国のプロジェクトマネジメント協会(PMI)が作ったPMBOK(R)を思い浮かべる人が多いと思う。
PMBOK(R)は1987年に原型ができ、1996年に標準として世に出された。その後、改版を重ね、現在は2012年に発表された第5版が最新版となっている。

PMBOK(R)の初版はその名前の通り、知識体系が中心で、ひとつのマネジメントがプロセスとして確立されているのはリスクマネジメントだけだった。その後、プロセス志向が強くなり、第3版からは形の上ではすべてのマネジメントがプロセスとして連結された(ただし、インプットやアウトプットが抽象度が高く、プロセスだとは言い難い面もある)。

プロセス的になってきた背景は2つあり、一つは知識体系の使い方が固定化してきて、標準プロセスとして提供しても問題なくなってきたことがある。もう一つはPMBOK(R)の普及とともに底辺が広がり、認定資格と知識体系という組み合わせだけでは活用できなくなってきたことだ。

これに対して、日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)が作ったP2Mという標準がある。こちらは基本的にプロセスはない。コンピテンシーという言い方をしているが、概念的な標準があり、それを利用者が解釈して実行するようになっている。


◆実行力を高める2つの方法

> プロジェクトマネジメントの2つの標準をみると、概念的な標準の方が応用がきく代わりに、使うにはその意味を解釈して、実行できる形に落とす能力が必要になる。これに対して、プロセス化すれば、具体的な行動の手順を示すことになるので、誰にでも実行できるようになる。

誤解を恐れずにいえば、PMBOK(R)を使えるプロジェクトマネジャーよりは、P2Mを使えるプロジェクトマネジャーの方がプロジェクトマネジャーとして能力が高いと思われる。

この問題は標準に限らず、プロセスや仕組みと言われるもの一般に当てはまる。

実行能力を上げるには、実行者の能力(コンピテンシー)を向上するか、組織能力(プロセス、テンプレート、ベストプラクティスなど)を向上するかが必要になる。コンピテンシーを高めて実行力を上げようとすると個人差があるので、ばらつきが大きくなる。これに対して、組織能力を上げる方向にいくと、ばらつきは小さくなるが、パフォーマンスが悪くなる。

よく言われるように組織は2:6:2の比率で、できる人、普通の人、ダメな人がいると言われる。仮にそうだと考えると、6割の人が同じように行動できるような標準を設定するのが組織全体としてパフォーマンスが高くなる。これが仕組みを作ったり、プロセスを作ったりする根拠になっている。


◆コンセプチュアルな仕組み

これに対して、第三の道があるのではないかと思う。それが「コンセプチュアルな仕組み」を作るという方法だ。つまり、仕組み化を概念的なレベルで行い、それを具体的なプロセスに落としていくのだ。そして、標準として使うのは概念的なレベル(仕組み)のものでもいいし、具体的なプロセスでもいいことにする。

このような建付けにしておけば、2割の人は概念的な仕組みを使えばいいし、6割の人は具体的なプロセスを使えばよい。

仕組みとプロセスは同じ意味で使われることが多いが本来は違うもので、仕組みはシステムという概念的なものであり、プロセスは具体的な手順を示すものである。その意味で、これが本来の姿だとも言える。


◆6割を上位2割にするためにコンセプチュアルスキルを高める

その際に一つ考えたいのは、6割の人の中で、どれだけが2割に持ってくることができるかである。実は、この部分の能力開発がほとんど行われていない。そのため、プロセスを変えると多少厄介なことになる。

仕組みとして明確に決定した上で、プロセスに落としていけば、何かの事情でプロセスを変えても本質的な変化はない。プロセスでやり方を覚えていても、応用が利く。

コンセプチュアルな仕組みを可能にするのはいうまでもなくコンセプチュアルスキルである。6割の人がコンセプチュアルスキルを身につけることよって、上位2割に近づく。その意味で、実行力の源泉はコンセプチュアルスキルにあると言ってもよい。

これは仕組みに限らず、戦略とか、ビジョンを上位概念と考えても同じことだ。

このことは単にプロセスを実行できるだけでなく、自立的な組織に変化していくことである。平たくいえば、概念的な仕組みが与えられ、その解釈を各自が行い、自分のやりやすいやり方で仕組みの実行をしていく。これによって、自立とともに、パフォーマンスの向上も期待できる。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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