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コンセプチュアルスキルの高い人は、決めるべきところを明確にし、迅速な意思決定ができる。低い人は、意思決定の方向性を見いだせず、情報収集に明け暮れ、決定できない

第30話:コンセプチュアルな意思決定(2016.08.25)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆意思決定がコンセプチュアルな人

これまで問題解決、計画、構想とコンセプチュアル思考でどのように行動が変わるかを考えてきましたが、今回は意思決定行動について考えます。まず、この行動はコンセプチュアル思考力の高い人とそうでない人で大きくは以下のような違いがあります。

・高い 決めるべきところを明確にし、迅速な意思決定ができる
・低い 意思決定の方向性を見いだせず、情報収集に明け暮れ、決定できない。

コンセプチュアルスキルが低いと意思決定において以下のような問題が起こりがちです。

(1)何を決めるべきかが不明確で、決定に時間がかかる
(3)客観性や論理性にこだわり、情報収集に明け暮れ、決定できない
(3)長期的な視点が欠けた部分最適な意思決定になる


◆問題行動を変える(1)

コンセプチュアルスキルが低い人の意思決定に「問題行動」として多いのは、まず

(1)選択肢が不明確で、決定に時間がかかる

という行動です。意思決定は何かを決めることですが、何を決めればよいかを決めるのがなかなか、難しいものがあります。たとえば、残業をしないようにプロジェクトを進めるかどうかを決定したいとします。すると、選択肢として、残業する/残業しない の2つにしたくなりますが、こういう選択肢で意思決定するとあとで付加条件をつけなくてはならないような問題が必ず起こります。つまり、この2つ以外に、何か条件のついた選択肢が必要なのです。それは、1週間に何時間なら残業してもよいようなものかもしれませんし、プロジェクトマネジャーの指示があればよいといったものかもしれません。

いわゆる意思決定手法でも選択肢の設定がポイントとして考えている手法が多いのもこのためです。

では、なぜこういう状況に陥るのでしょうか。まず、最初に上げることができるのは、意思決定すべき問題を大局的に捉えていないことが挙げられます。上の残業するかどうかの意思決定であれば、問題を残業だと捉えていますが、大局的で、本質的な問題は残業すべきかどうかでなく、どのように働けば生産性が上がるかとか、満足度が高まるかといった問題であることが多いでしょう。それを捉える必要があります。

次に、その大局を分析的に捉えることができないという問題があります。これは意思決定すべき問題の本質が何かということを的確に捉えられないことに原因があります。残業の問題で、本質が生産性にあると考えることができれば、どのように分析していけばよいかが明確になり、それがそのまま選択肢になってくるわけです。

ということで、これらの問題を解消するには

・問題を大局的に捉え、その分析から選択肢を作る

ことが必要だと言えます。これによって、意思決定の速さが生まるでしょう。


◆問題行動を変える(2)

次にコンセプチュアルスキルが低い人の意思決定に「問題行動」として多いのは

(2)客観性や論理性にこだわり、情報収集に明け暮れ、決定できない

という行動です。これは選択肢を決める場合にもありますし、選択肢を選ぶ場合にもよく見かける現象です。ロジカルシンキングが普通になってきて、論理性は不可欠だと考えられています。しかし、意思決定と言うのは、論理的に決定できないので行うものです。そこを勘違いして、論理的に判断できるまで情報を集めようとする人がよくいます。

そもそもでいえば、論理的に考えるといった場合、100%成り立つような答えを見つけられるとは限りません。残業の問題でも、残業を止めたら生産性が上がると考えたとしても100%そうなるとは限らないわけですが、そうなりそうだと考えて決めていくわけです。

その場合、問題はどこまで情報を集めれば、判断してもよいかです。これは、はっきりいって個人差がありますが、コンセプチュアルスキルの高い人は、これ以上集めても確率はあまり変わらないというポイントを見つけることが上手です。逆に低い人は、あまり確率が変わらない状況になってもまだまだ情報を集めたがります。

なぜ、そうなるかというと、全体が見えていないということが挙げられます。逆にいえば、大局を捉えていれば、ここの判断は適切にできるでしょう。ただし、判断は100%ではないので、主観が入ってきますし、逆にある程度の客観性も必要になります。

以上より、この問題行動に対処するには

・意思決定したい問題や選択肢の全体像を捉え、意味のある情報収集のみを行う

という方法を取ることがよいと思われます。


◆問題行動を変える(3)

次にコンセプチュアルスキルが低い人の意思決定に「問題行動」として多いのは

(3)長期的な視点が欠けた部分最適な意思決定になる

という行動です。これは意思決定している問題が当面何か害を引き起こしている問題だという状況が多いために起こることが多いようです。

残業の問題であれば、目先の問題として残業をどうするかを決めなくてはなりませんので、ついつい、そういう視点でしか問題を捉えないものです。ところが、実際には目先の問題だけを考えているので決めることができないことがよくあります。残業の問題などはまさにそうです。

長期的に考えてみて、どうすればよいかを考えることは、選択肢の設定にも、選択肢の選択にも別の視点を与えてくれ、意思決定をスムーズにすることがよくあります。たとえば、キャリアを考えたときにどうすればよいのだろうと考えてみると、意外と簡単に残業は止めた方がよいといった答えが出てきます。

この問題に対しては、

・意思決定に長期的な視点を入れる

という解決方法になりますが、これによってこの問題行動だけではなく、意思決定のスピードを向上させることも可能になります。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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