第11話:5つの軸について考える(2)〜洞察は直観から生まれる(2015.03.10)
◆直観と直感
コンセプチュアルスキルを構成する5つの軸に関する考察の第2弾は直観と論理という軸です。本論に入る前に言葉の整理をしておきたいと思います。辞書を引くと、「ちょっかん」という漢字には「直感」と「直観」の2つがあります。
両方に共通しているのは、推論や考察をせずに、対象を捉える(認識すること)でありますが、直感という場合には、感覚的に感じ取るようなニュアンスがあります。これに対して、直観という場合には、経験(知識)に基づいて対象を捉えることで、哲学的な概念です。
もう一つ違いを上げると、直感というのは本能ですが、直観というのは本能ではないところが違いだと言えます。
5軸の一つとして使っているのは、直観ですが、これはビジネスやマネジメントにおいては、経験に基づき勘が働くということはよくありますが、本当に感性だけで判断していることは少ないと考えているからです。
その理由ですが、ビジネスの判断はトップマネジメントであっても最終的に他者を納得させるだけの合理性が必要になります。感性だけで判断しても分かる人には分かるということでこの合理性は生まれません。
◆直観による判断とは論理のつながりを構築できる
直観による判断というのは、その判断に至った理由を即座に完全には説明できなくても時間をかければその直観が合理的である理由を説明できる論理の繋がりを構築できると考えられています。
人はいろいろな経験に基づいていろいろなロジックを持っていたとします。考えるということは、このロジックを試行錯誤でつないで結論を出していくことですが、直観というのは試行錯誤を飛ばして問題と結論になるところに瞬時につないでいるようなイメージです。だから後で論理構築ができるわけです。
◆なぜ、「ベテランのやることはやはり違う」と感じるのか
さて、前置きが長くなりましたが、「考える」というとすぐに論理的に考えることを頭に思い浮かべると思いますが、考える中で直観というのは以外と使われているものです。上に述べたように直観的に考えたことはある程度の論理性がありますので、結果だけをみれば論理的に考えているように見えますが、実は直観を使っているわけです。
経験が大切だと思っている人はこのように変化の激しい時代では少なくないと思います。中には(成功の)経験は足を引っ張ると考える人もいますが、初めての仕事でもやはり「ベテランのやることはやはり違う」と感じさせられることは多いように思います。
もちろん、経験をしていればよいというものではなく、初めてのケースに経験を活かせているかどうかは明らかに個人差があります。差の要因になっているのがコンセプチュアルスキルで、特に前回の抽象化と今回の直観の2つだと思われます。抽象/具象、直観/論理の思考軸が強い人は経験をうまく活かせることができるようです。
抽象/具象の方は、経験を抽象化して、それを具象化することによって、経験したことがない具体的な方法を考えることができるからだと説明できます。
直観/論理の方では、経験が増えれば増えるほど、上に述べたインプットから結論に瞬時につなぐ(ある種の)メタロジックが強化されます。これはひょっとするとクオリアのようなものかもしれません。
◆直観がもたらすもの
直観を使うことによって得られる効果はまずは生産性です。たとえば、5つの実現案があって実際に試してみて、目標をクリアできる案を決めたいとします。この場合、どの案から試してみるかによって1回で終わる場合もあれば、5回やらなくてはならない場合も出てきます。これによって大きく生産性が異なってきます。
もう一つのメリットは気づくことです。よく「何かがおかしい」というところから問題が見つかるというケースがありますが、これは直観の成せる業です。
一般的に直観が有効に機能するのは、以下のような場合です。
・学習済みの行動パターンを迅速に展開すればいい場合
・問題の存在を察知する必要がある場合
・合理的な分析の結果をチェックする場合
・予想がくつがえった場合
・「大きな絵(ビッグピクチャー)」を構築する場合
・綿密な分析は棚上げして、迅速にそれなりの解決に達したい場合
◆論理や分析の非合理を直観的に見抜く
> いずれも重要な直観の使い方ですが、特に注目してほしいのは3番目です。直観は最初の切り口に使うようなイメージが強いですが、このケースでは逆で、最初は合理的な分析を行い、そのあとで直観によってチェックをするわけです。
分析や論理というのは必ずしも合理的であるとは限りません。つまり、それらの結果を使う場合には、直観をうまくつかって合理性の検証をすることに意味があるわけです。この考えが、直観/論理の軸になっています。
◆洞察との関係
考えることの中で本質を見抜くというように、表面的に見えていないものを見抜くことがコンセプチュアルスキルの基本でもあります。つまり、それまで分からなかった新しいつながりを「見抜く」ことで、これは洞察と呼ばれます。
この中で直観は、「新しいつながりを感じる役割」を果たします。
この先入観の壁を破るのが直観であることが多いのです。
問題が起こっている現場をみて、論理的に考えるのではなく、過去に経験したことをふと思い出して、同じことが起こっているのかもしれないと考え、現象と原因が関係ありそうだと見抜くところに直観の役割があるといえます。
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著者紹介
好川哲人、MBA、技術士
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15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「コンセプチュアル・マネジメント(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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