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二者択一ではなく、統合的な思考を行うためには、適切な問いを立てることが重要である

第63回 イノベーションか、オペレーションか、それが問題だ。(2014.11.26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆イノベーションか、オペレーション・エクセレンスか

あなたの会社は、もっとも大口の取引先A社からどんどん斬新な製品を次々と出していることが評価されている。ところが、そのA社の経営者が変わり、役員会で製品の価格が高いことに批判の矛先が向いてきた。もちろん、他社にはない製品を購入しているのだから合理的な判断というよりは、感覚的な要素が大きい。

あなたの会社の中でも、A社の意向に沿って新規性を追い求めるより、コストダウンに注力すべきだという意見と、自社が取引先から評価されているのは新規性にあるので今の方針を継続していくべきだという意見に二分されている。

どのように考えればいいのだろう。

こういうときに大抵は二者択一を考える。上のケースだと、A社がどのように動くかがまず問題になってくる。コストダウンしなくては取引量を減らされるかもしれないが、コストダウンに走って新規性を失うと会社そのものが選ばれなくなる可能性もある。もう一つの視点は、数年のスパンで見たときに、A社以外の取引先も含めてどちらが売上げや収益が大きくなるかという判断の問題になる。

イノベーションを取るか、オペレーション・エクセレンス(オペレーションの洗練)を取るかという問題に直面しているわけだが、このような状況は意外と多い。

◆オープンイノベーションという解

この問題の一つの解決方法はオープンイノベーションである。有名なところでは、1990年代に窮地に陥ったP&Gが、復活をお家芸でもあったイノベーションにかけるか、コスト削減にかけるかで社内の意見が二分された。そこで、アラン・ラフリーは、重要性の低いイノベーションをアウトソースするという意思決定をし、見事にP&Gを復活させたという事例がある。

P&Gの事例は二者択一を迫られたときに、第3の道を探したということで、興味深い事例である。

今、多くの企業がイノベーションとオペレーション・エクセレンスの二者択一を迫られ、多くはイノベーションをあきらめている。この判断の将来的な影響は計り知れないが、本当に両立の道はないのだろうか?

両立を考えるためには、P&Gがイノベーションは社内で行うという制約を取り除いて考えたように、何らかの制約を取り除く必要があるのは間違いない。現実的な壁の取り除き方の一つは、「日常業務の一環としてイノベーションを行う」ことである。

◆統合的な思考

このために重要なことは統合的な思考を行うことである。そのためには、適切な問いを立てることが重要である。

冒頭の例であれば、新製品開発を重視すべきか、コストダウンを重視すべきかという問いではなく、たとえば、イノベーションによりコストダウンを行う方法はないかという問いを立てることである。

今の企業には、戦略実現のために、イノベーションを行い、新しい技術や製品を開発し、完成したら生産を行い、戦略貢献を果たすという前提(モデル)がある。この前提を崩して考えることが必要であるが、そのためにはどのような問題を解けばよいかが問題なのだ。

◆統合的な思考の例

たとえば、スマートフォンを考えてみよう。成熟期を迎えた商品であり、コストダウンが求められているのだが、通信環境など、利用環境が変化しているので、それに対応するイノベーションとコストダウンが求められている。

そこで登場したのがモジュール型のスマートフォンである。スマートフォンの機能をモジュール化して、自由に組み合わせてスマートフォンとして使用できるという代物だ。これであれば新しい機能をタイムリー提供できるし、必要な機能のスマートフォンにでき、製品レベルの価格を抑えることができる。また、モジュールレベルでも量産効果により、コストを抑えることができる。話題性もあるが、よく考えられているし、デジタルらしい製品である。

では、どのようにしてここにたどりついたのだろうか?推理をしてみよう。

目の前にある問題はコストを下げることと新製品をどんどん出していくことだ。問いに注目して、両者を抽象化して目的を考えてみると

・価格競争力をつける
・イノベーション力を強化する

の2つである。この2つだと考えると、部品コストを下げるとか、新しい製品を開発する必要性は必ずしもなく、たとえば

製品の提供単位を見直し、システム化することにより、イノベーションのコストを下げ、製品価格を下げていく

という第三の方法が考えられる。そこでこの方法の具体的なアプローチとして

製品を部品化し、部品の組み合わせで新しいコンセプトの製品を提供していく。また、新しい部品の開発も行う場合、従来よりも多くの製品で使われるようにする

というアプローチがあり得る。

このようにモジュール型のスマートフォンでは、問いからイノベーションとコストの両方を統合したアプローチが実現できていることになる。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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