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第61回 製品ライフサイクルとイノベーション戦略(2014.11.12)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆iPhone6はなぜ、新鮮さがないといわれるのか

新しいiPhoneが登場したときに、変わったのは大きさだけで新鮮味がないとか、目新しいのはApple Payと呼ばれる決済方式だけだとか、イノベーション好きのアップルファンからは批判的な声が多かった。

しかし、イノベーションが行われていないかというとそういうことでもない。

今回の戦略ノートはこの話題を取り上げてみたい。


◆製品ライフサイクル

まず、製品には製品ライフサイクルがある。製品が誕生し、購入されなくなるまでの一連のサイクルである。

一般に製品ライフサイクルは

(1)揺籃期
 製品に対してユーザの求める機能は不明確であり、多くの考え方(コンセプト)が提唱される。メーカは大きな投資をするが無駄になることも多い。

(2)成長期
 〇〇製品とは△△であるというドミナントデザインが確立され、製品に対して共通したイメージが生まれる。製品が市場で受け入れら、大きな利益が得られる一方で、機能を差別化するために開発が盛んにおこなわれる。

(3)成熟期
 製品が一通りいきわたり、価格競争が起こる。開発は主にコストダウンのために行われる。

(4)衰退期
  ユーザーは次第にその製品を購入しなくなる。

の4つに分けることができる。

それぞれの時期におけるイノベーション戦略は、その時期に自社の製品の競争力との兼ね合いで行われる。


◆製品の競争力のレベル

競争力は

(a)優勢
・製品開発の方向と速度を制御できる
・他社の目標にされる
・製品の新しい方向付けができ,広範囲な選択が可能

(b)強い
・自社の事業において製品が主要成功要因になっている
・競合他社の戦略に影響されず,自社の製品を考えられる

(c)普通
・製品戦略を誤らなければかなりの力が発揮できる

(d)弱い
・競合に対して製品では脅威を与えられない
・事業における競争力は持つこともあるが,製品が源泉にはならない

(e)劣勢
・生き残れない

の5つに分けることが多い。当然ながら、各ライフサイクルにおけるイノベーションの戦略は競争力によって変わってくる。これを整理してみよう。


◆揺籃期のイノベーション戦略

まず、揺籃期で「優勢」、あるいは「強い」である製品はドミナントモデルを確立できる可能性が高く、ドミナントモデルを獲得すべく、積極的にイノベーション投資を行う。

アップルは早くからスマートフォンのコンセプトを提唱して、iPhoneという優れた商品を投入し、揺籃期で圧倒的な優位性を構築した。

揺籃期に競争力が普通以下の商品はこの時点におけるイノベーションをあきらめ、ドミナントモデルの確立を待つ戦略に出ることが多い。


◆成長期のイノベーション戦略

成長期では市場そのものが拡大しているのでどの企業も利益を得られるため、積極的にイノベーション投資を行う。「優勢」、あるいは「強い」である製品は、ドミナントモデルに近い基盤技術を持っているため、さまざまな機能を開発し、標準的な機能とする一方で、シェアを確保ためのイノベーション戦略を実行する。

一般的に、市場への浸透が早ければ早いほど多くの利益が得られるので、競争力が「普通」以下の製品は開発が遅れ、シェアや利益を得にくい。

スマートフォンでは揺籃期が独壇場を築いたiPhoneがドミナントモデルも確立したが、強力な開発力を持つサムスンが追従し、多様な機能を投入し、アップルに並ぶシェアを確保した。そのほかのメーカは利益の確保はできたもののシェアを獲得できていない。

この時期にはオープンイノベーションが起こりやすく、オープンイノベーションによってシェアが大幅に変わることもある。実際にiPhoneは新しい機能ごとに特別な技術を持つサプライヤーと協力し、オープンイノベーションで作ったシステムであるといっても過言ではない製品である。


◆成熟期のイノベーション戦略

成熟期に入るとコスト競争になる。ここではユーザの選択が機能中心から価格中心になるので、シェアが入れ替わることがある。iPhone6は成熟期の市場に向けた商品であり、原価、開発コストとも押さえて、利益の確保をしている。これに対して、サムスンは廉価版の展開をし、シェアにおいてアップルに差をつけた。

一方で、中国のシャオミの廉価版のスマートフォンが指示され、サムスン、アップルに続くシェアを確保している。興味深いのはアップルはシャオミの影響を受けていないことである。

成熟期には、ビジネスモデルのイノベーションが起こることが多い。アップルが電子決済の仕組みを取り入れたのがその典型的な例である。


◆まとめ

このようにイノベーションはすべての製品ライフサイクルで起こるが、ライフサイクルによってそのベネフィットを得る方法も大きさも異なることを念頭において、イノベーションの戦略を策定する必要がある

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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