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第77話:イノベーティブなチームをつくる(2014/01/06)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆日本にはチームはないという意見に対する反応

2014年第1回のPMスタイル考です。実は2013年年度の第1回(4月5日)にもチームについて書きました。

【PMスタイル考】第66話:チームになろうよう

この記事を書いたきっかけは、2012年の後半に齋藤ウィリアム浩幸さんという起業家が

齋藤ウィリアム浩幸「ザ・チーム (日本の一番大きな問題を解く) 」、日経BP社
(2012)


という本の中で、「日本にはチームがないのでシステムが作れない」という問題提起をされたことで、その通りだと思っているので書いた記事です。

この議論を仕掛けると、それは見当外れだという意見をよく聞きました。日本にもチームはあり、チームワークは欧米に比べると高いのではないかと言われている人と結構出会いました。

改めて日本にはチームがないという齊藤さんの指摘の適切さを認識することになったわけですが、チームワークが欧米より高いと言っている人は、斉藤さんとはチームというものに対する認識が違うのだろうと思います。


◆日経BP谷島宣之さんの見識

詳しい考察は後でしたいと思いますが、実は僕がこのような意見を持つようになったきっかけは、2006年にメルマガのイベントで日経BPの谷島宣之さんに

「なぜ製品開発プロジェクトは失敗するのか」

という講演を戴き、この中で米国のプロジェクトマネジメント協会の提唱するプロジェクトマネジメントプロフェッショナルの5つのプロフェッショナル責任について触れられました。そして、

(1)個人の健全性(真摯さ)とプロフェッショナリズムの確立
(2)個人の能力(コンピタンス)の増進
(3)専門領域の知識集積への貢献
(4)利害関係者間の調整
(5)チームや利害関係者との協調関係

の5つの中で実は日本人自身が一番できていると思っている(5)のチームの協調関係が一番できていないのではないかという指摘をされ、強く共感しました。これが問題意識を持つようになったスタートです。

以後、そういう目で見ているバイアスもあるかもしれませんが、この点は7年前とあまり変わっていないように感じています。

そうこうしているうちに、2012年に齊藤さんの指摘に出会ったわけです。


◆自立型と自律型

さて、ではどうして日本にもチームはあると思う人が多いのかを考えてみましょう。

マッキンゼーで長年採用マネジャーのポジションで仕事をされていた伊賀泰代さんが「採用基準」という本で面白い指摘をされています。日本人の考えるチームはリーダーが一人いて、フォロワーがリーダーに協力して仕事を進めていくというスタイルだと言います。つまり、成果責任はリーダーにあり(あるいは誰にもない)、それ故にフォロワーは自分の担当範囲からはみ出さないで自律的に責任を持って仕事をし、最終的な意思決定においてはリーダーに従うというスタイルです。従って、リーダーだけがリーダーシップの発揮を求められます。

これに対して欧米のチームは、チームに参加している人はすべてリーダーシップを発揮する責任があり、(組織的に決められている)リーダーが指示をしなくてもチームの成果実現のためにできることをするし、リーダーと意見が対立しても議論をして結論を出して進めていくものだといいます。

要するに欧米のチームは日本人が長く羨望している「自立型組織」なのです。これに対して日本人の考えるチームは「自律型組織」にすぎません。

伊賀さんは日本人にとってはチームメンバー全員がリーダーシップを発揮することは「不思議な概念」だと言い、一人で成果責任を負うリーダーは足らないものはすべて自分でしなくてはならない、雑用係になっていると言います。

そして、この延長線上にやりたくもないリーダーを押し付けられたという発想が生まれ、さらには、自分の担当だけしっかりとやれば責任を果たしたことになるチーム、言い換えれば全体の成果にはメンバーはコミットしないチームができるわけです。

これが齊藤さんのいう日本にはチームがないという現象です。


◆欧米流のチームがすべてか

さて、ここまで読んで、だから何が悪いのか、日本はカリスマリーダーがいて、メンバーは滅私奉公の協力をして、数々の偉業を成し遂げてきたと思う人もいると思います。それはそのとおりです。スティーブ・ジョブズが存命の時代のアップルだって同じではないかと思う人もいると思います。

日本が今のようなスタイルで数々の成功を成し遂げてきたのは、キャッチアップだったからです。少なくともコンセプトは欧米で生まれ、それを製品に落とすところだけに特化して成果を上げてきたからです。もちろん、ウォークマンのようなコンセプトメイキングをした製品もありますが、特殊な事例だと言ってよいでしょう。

コンセプトを製品に落とすには、当然乗り越えねばならない課題もあるわけですが、課題もはっきりしているし、必要な専門性もはっきりしています。したがって、分業する方が効率的です。したがって、今の日本のやり方が合理的なのです。

ところがコンセプトから作るイノベーティブなチームでは話は違います。コンセプトを生み出すのに誰が何をしなくてはならないかもはっきり決まりませんし、生まれてきたコンセプトから製品を作る場合にもどんな専門性が必要かも想定できません。組織から指名されたリーダーにしても答えを持っているわけではありません。だからできるだけ優秀な多様な人を集めて、集まった人が全員リーダーシップを発揮するチームを機能させる必要があります。これがリーダーの仕事です。

齊藤さんが日本にはチームがないと言っているのも、このような意味でチームがないと言っているのだと思います。


◆イノベーティブなチームの要件

では、このようなスタイルで活動するチームはどのような特性を持つ必要があるのでしょうか?実はこの議論は結構古く、マッキンゼーがリードしています。起源は同社のパートナーであったジョン・カッツェンバックとダクラス・スミスが、抜きんでた成果を上げたチームを調査し、5つの条件を示したことに遡ります。それは以下の5つです。

(1)少人数である
(2)メンバーが互いに補完的なスキルを有する
(3)共通の目的の達成に責任を持つ
(4)問題解決のためのアプローチの方法を共有している
(5)メンバーの相互責任がある

あなたの参加しているチームはこの条件を満たしているでしょうか?まあ、抽象度が高い表現なので、全部満たしていると「言えなくはない」と思いますが、それぞれの条件の本質を考え、すべて満たしているチームはめったにないと思います。

この見識がまとめられたのは1993年ですが、それからマッキンゼーでは脈々と引き継がれているようです。伊賀さんのリーダーシップ論の背景にもこのチーム論がありますし、マッキンゼーのOBで若者への過激な提言で一躍有名になった京都大学准教授・瀧本哲夫さんが書かれたチーム論の本でもこの条件を満たすチームの作り方が語られています。


◆普通のチームからイノベーティブなチームへ

その中に、チームのアンチパターン(ありがちなチーム)が書かれていますので、紹介しておきます(ジョン・カッツェンバックとダクラス・スミスはこのようなチームをワーキンググループだと言っています)。

・年次、経験、職位、バランスで選ばれた数多くの正式メンバー
・メンバーは固定的なスキルを持つ
・定型的で平凡な目標
・問題解決ごっこ
・集団責任は無責任

上の条件とこのアンチパターンを比較してもらうと、チームがないと言われる意味が分かるのではないかと思います。ほとんどのチームはアンチパターンにより近いのではないでしょうか?ひとつだけ誤解しやすいところをコメントしておきますが、スキルというのは技術的なスキルだけではありません。ものの見方、考え方、ヒューマンスキル、などの広い意味でのスキルで、アンチパターンが示しているのは要するに多様性がないという意味です。

イノベーションを起こすには一人ではできません。イノベーティブなチームが必要です。今までと同じような発想で作るありがちなチームを作っていたのでは実現はできません。

具体的にはメンバー全員が全員がリーダーシップをとれるチームを作らなくては新しい発想はでてきません。そのためにはジョン・カッツェンバックとダクラス・スミスのいう条件を満たすチーム編成、チーム運営をする必要があります。


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【カリキュラム】
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  2.コンセプチュアルなチームは本質にこだわる
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  5.コンセプチュアルなチームワークエクスサイズ
、PMAJ共催
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【参考資料】

ジョン・カッツェンバック、ダグラス・スミス(吉良 直人、横山 禎徳訳)
「「高業績チーム」の知恵―企業を革新する自己実現型組織」、ダイヤモンド社(19
94)


伊賀 泰代「採用基準」、ダイヤモンド社(2012)

瀧本 哲史「君に友だちはいらない」、講談社(2013)l

著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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