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人をリスペクトできるリーダーはダイバーシティをうまく扱うことができ、それが成功につながる

第4回 ダイバーシティ(2006.12.28、2007.04.27改定))

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆組織の不文律

前回、目的を調整して、目標を設定するという話をしました。このような活動の中で、非常に厄介な問題がダイバーシティー(多様性)です。

コンサルティングをしていると、目的など明々白々で改めて考える必要などないという意見をよく聞きます。「**システムを開発ことが目的」、「新商品**を開発することが目的」といった意見です。確かにこのような意見にも一理あります。組織からすれば当たり前の話ですので。

ここでリーダーに望みたいのは、このような発想の原点に何があるかを考えてみることです。このような発想の原点にあるのは、組織全体が「受託業務を全力で行うことは当たり前」、「新商品を世に出すことは誇らしいこと」だという思いを持っていることです。不文律ですね。特に、日本のエンジニアというのはそのように発想し、それが高度成長をもたらしたわけです。

一方で、今、彼らが自分の息子のような年代の若手社員が一生懸命やらないということに不満を持っていることも事実です。不文律が崩れてきているのです。若手というとスキル面、キャリア育成面などで微妙な話もありますが、もう少し、この辺がはっきりする例をお話ししましょう。


◆残業しない中堅社員

コンサルティングをしたSIプロジェクトで実際にあった例です。

残業を拒否している中堅のプロジェクトメンバーがいました。本人には趣味があり、それを優先しています。指導的な注意、あるいは、依頼はできるが最後は本人の問題です。強制はできません。ただ、本人の能力は極めて高いのです。少なくとも毎日、その日のうちにできることはきちんとやってから退社しています。こうなると非常にやっかいな問題です。

ところがプロジェクトとしては回らなくなってきました。定時後の彼との共同作業ができないためだという意見も出てきました。このため、同期の必要な作業がだんだん遅れてきたのです。彼に残業を依頼してみたが、聞く耳を持ちません。

みなさんはこの話をどう思われますか?


◆リーダーの英断

著者とプロジェクトマネジャーはこの問題についてかなり議論をし、結局、彼を基準におくことにしました。

つまり、彼に併せて仕事の段取りをすることを他のメンバーに指示したのです。メンバーは非現実的だといいながらも、徐々に自分だけでできるところは定時後に回し、同期が必要な作業を定時間内にやるというタイムマネジメントの習慣ができてきました。お客様にはさすがに事情は話しませんでしたが、仕事のやり方を変えるので協力してほしいと申し出、しぶしぶながら受け容れてもらいました。

著者はこのプロジェクトマネジャーのリーダーシップを高く評価しています。さすがにこのような極端な事例はあまりないでしょうが、似たような例は結構あります。このような場合には、すべてを並べてみて、全体としてよいやり方を決めようと提案するのですが、まず、受け容れてもらえません。必ずといってよいくらい、多数決になります。上のような状況だと、残業しないメンバーを交代させようと言い出す人も必ずといってよいくらいいます。平気で協調性とかを持ち出すのです。

    
    図1:ダイバーシティの尊重


◆民主主義における協調性はダイバーシティの尊重

民主主義における協調性とは、全員で意思決定し、意思決定されたことに対して、自分の意志と異なっても全力で協力することです。

  全員で意思決定をすること=多数意見を採ること

だと思い込んでいるので、一人だけが変わった行動をしている状況だと、その人が悪いということになってしまいます。これはダイバーシティマネジメントの欠如です。

何がかけているかというと、一人ひとりに対する尊重の心です。リスペクト。人をリスペクトできるリーダーはダイバーシティをうまく扱うことができ、それが成功につながることは少なくありません。

結果として上に紹介したこのプロジェクトSIプロジェクトは成功しました。特に、顧客からのマネジメントに対する評価も極めて高かったようです。ただし、社内の評判は決してよくありませんでした。顧客は評価しているし、予算内・納期内で収まったので文句は言えないものの、プロジェクトマネジャーの判断を「一人のわがままを抑えられない」という見方で疑問視する意見が多かったのです。これも現実です

どちらの言い分が正しいかは非常に微妙です。しかし、一ついえることは、プロジェクトマネジメントはダイバーシティを前提にしていることです。上の例などまさにそうですが、きちんと行動レベルの計画を作ってプロジェクトを進めていけば、残業しない方針のメンバーがいるといったことなど、問題になるのはせいぜい1プロジェクトで2〜3回でしょう。それもたいした問題になるとは思えないし、なったとしても、2〜3回であれば譲り合えるでしょう。

プロジェクトマネジメントをやるという限り、成果を管理する、ダイバーシティをマネジメントすることは「あたり前」なのです。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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