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「誰に」の次に「何を」を考える際の一番のポイントは製品の価値にある

第25話 イノベーティブリーダーの質問力(8)〜顧客の煩わしさを取り除き、ユニークな恩恵を与える(2013.11.20)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆「誰に」の次に「何を」

第22話から第24話まで「誰に」に関する質問について考えた。一番最初に述べたようにイノベーションにおいてこの質問がもっとも重要な質問である。

イノベーションではついつい、製品を決めてからどこに売るかを決めているケースが多いが、これではうまく行かないというのが共通認識になりつつある。

最近有効性が注目されるようになってきた「リーン・スタートアップ」でも、まず、最初に顧客発見のステップがあることからも分かるように、まず、「誰に」なのだ。そして、それらの顧客が「何を」、つまりどのような製品を求めるかを考えていく。

ということで、今回からは「何を」に関する質問について考えていきたい。


◆中核価値を固定しない

「何を」を考える際の一番のポイントは製品の価値にある。

第22話でマスキングテープのユーザーイノベーションの事例を紹介したが、マスキングテープは枯れた製品であり、塗装において余計なところに色を付けないことに価値があった。しかし、雑貨の梱包用のリボンとして20億の市場ができた。このように枯れた製品ですら、その中核価値が変わる可能性がある。そして、中核的価値を決め打ちしていたマスキングテープのメーカーは商機を逃した。

イノベーションのように新しい製品を生み出す際には、中核的な価値を決め打ちすることは決して賢いことではない。上に述べたまず、製品を考えると同じ誘惑から生じる落とし穴である。

イノベーションにおいては、むしろ、製品をライフサイクルの中でどのような価値を持つものに進化、発展さえていくかという発想を持つ必要がある。

「何を」に関する質問を考えるに当たってはこの点をよく認識しておかなくてはならない。以上のような前提で、「何を」に関する質問を考えていく。



◆新しいトレンドを利用する方法を考える質問

まず、最初の質問は、自分たちの製品やサービスに新しいトレンドを取り入れ、新しいものにするという観点からの質問である。

(1)新しいトレンドをどうすれば利用できるか

この質問を考えるには、まず、製品のイノベーション、技術のイノベーション、顧客行動の変化の予兆としてどのような傾向を掴んでいたかということを考えてみるとよい。大きな変化は目につきやすいが、その変化が本質的にどのようなものであるかは変化の予兆に現れることが多い。

ここで重要なことは、製品そのものや技術の変化についてはその分野の問題であるが、トレンドについては必ずしもその分野で現れるとは限らない。たとえば、この10年くらいのトレンドの一つにデザインのシンプル化というトレンドがあるが、これはもともと、家電で生まれた動きがさまざまな分野に広まっていったものである。イノベーションのアイデアを求めてトレンドに注目する際には、他の分野のトレンドに注目し、複数の分野で見られるトレンドは自分たちの分野にもやってくると考えるのがよいだろう。


◆顧客の煩わしさを取り除く

次に、顧客視点からの製品に関する質問である。これは、顧客の煩わしさを取り除くことと新しい価値を提供することに集約される。つまり、

(2)顧客の煩わしさを取り除き、ユニークな恩恵を与えるにはどうすればよいか

といった質問をかんがえてみるのがよい。よく顧客の声を聞くといってユーザーの望むものを聞きだし、それを製品に組み込んでいくことがある。このやり方の中で欠かしてはならないことは、顧客の具体的な要求を聞くだけではなく、顧客の要求を抽象化することである。

たとえば、テレビの録画予約の機能の本質を考えてみてほしい。録画して自由な時間に見れること、保管しておいて繰り返し見れること、といったことが思い浮かぶ。後者は予約機能がなくでもできるが、前者のニーズが生まれたときに、どのようなことが起こったのだろうか。

働き方が多様化し、同じ時間にテレビを見ることが難しくなったのか。テレビ以外の娯楽が増え、テレビの優先順位が下がり、テレビに合せて行動することが少なくなったのかもしれない。

いずれにしてもこの問題の本質はテレビの放送と、視聴を非同期にしたいところにあるようだ。

つまり、テレビの放映時間に合せてテレビを見ることが煩わしいわけだ。そこで、その煩わしさを取り除くために考えられたのが予約録画という機能である。もちろん、背景には録画媒体のコストイノベーションがあるわけだ。

このままでは、コスト競争にまっしぐらになる。そこで、考えるべきことは「ユニーク」さである。この煩わしさを取り除く、ユニークは方法はないか。そこで生まれたのが、予約ではなく、放送をそのまま録画してしまうとうイノベーションである。

このイノベーションが画期的なのは、これまではリアルタイムで見るにしろ、録画してみるにしろ、事前に何を見るかを決めておかなくてはならないことだった。ところが、すべての放送をそのまま録画する方式だと、あとで見る番組を決めることができる。たとえば、会社で話題になったので、見てみようといったことができるわけだ。

つまり、事前に見る番組を決めるという煩わしさからもユーザーを解放している。

このようなユニークさによって、差別化し、競合に勝つことができるイノベーションになる。


◆シンプルというユニークさ

この点についてもう一つ考えておくべきなのは、ではそのようなアイデアに対して競合はどのように反応するかだ。ここまで織り込んだ製品のデザインによって、競争力のある製品を開発することができる。

この点で一つ考えてみてほしいことがある。それは、シンプルにするという対応である。競合は対応しにくくするということを考えた場合、シンプルにすることに勝る戦略はない。新しい機能をどんどんつけていってもそれはいたちごっこで、すぐに競合はもっとユーザに訴求できる機能を持つ製品を出してくる。ユーザーもそれを求める。

しかし、シンプルを打ち出すと、競合はマネができない。この点をよく考えてみる必要がある。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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