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第2回 抽象と具象の行き来でイノベーティブなコンセプトを作る(2017.05.16)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆宅急便の例

前回、お話ししましたように、本連載では、コンセプチュアル思考によってイノベーションを生み出していく方法を考えていきます。

まず最初は、抽象と具象の行き来を中心に考えてみたいと思います。この軸の使い方の一例として、前回はiPhoneを考えてみましたが、そこで述べました通り、組み合わせや工夫を抽象的なレベルで行うところにポイントがあるように思います。

これは言い換えると新しいコンセプトを作るということに他なりません。私がこの50年くらいで最高のサービスイノベーションだと考えているヤマト運輸の他急便を例にとって考えてみましょう。

ヤマト運輸の小倉昌男社長は小荷物配送に挑戦するかどうかを考えていました。悩みは、小荷物配送は大口運送に比べて効率が悪く、損益分岐点を超える荷物をいかに確保するかでした。

たまたま出張していたマンハッタンのある四つ辻の道路に米国の貨物運送会社ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の4台の集配車が止まっているのを目にしました。これを見て小倉氏は区割りを小さくすれば小荷物配送の効率を上げることができることに気づいたのです。


◆抽象と具象を行き来し、イノベーティブなコンセプトを

ここから小荷物配送として宅急便のアイデアが固まっていくわけですが、重要なことは、宅急便のコンセプトとUPSサービスを見たことの関係です。宅急便はUPSの配送方法のアイデアをそのまま使ったわけではありません。むしろ、宅急便というコンセプトを探す中で、一つの事例として捉えています。

つまり、抽象化して、集配のエリアを小さくして効率よく集配するというコンセプトが固まっていきます。このように、抽象と具象を行き来して、イノベーティブなコンセプトを固めていったものと思われます。


◆コンセプトから多様な具体的アイデアを

ここでもう一つ重要なことは、このコンセプトがあったので、通常の他急便以外にもスキー用具を運ぶスキー宅急便、ゴルフ用具を運ぶゴルフ宅急便、冷凍の荷物の集配を行うクール宅急便など、さまざまなサービスを展開していることです。言い換えると、抽象的なコンセプトから、具体的なサービスをいくつも展開できているのです。

宅急便の本を読んでみると、具体的なサービスを設計する際には、具体的なアイデアを出して検討していくだけではなく、しばしばコンセプトに立ち戻り、妥当性の検討をしていることが分かります。

宅急便のサービスの特徴の一つはサービスの多様性だと思われますが、多様なサービスの展開ができている理由の一つは間違いなく、このようなコンセプチュアルな思考にあるといってよいでしょう。


◆なぜ、コンセプトが大切か

最後に、コンセプチュアル思考がなぜ重要かを整理しておきたいと思います。宅急便の例からも分かりますように、具体的なサービスのアイデアをすべて一人の担当者が生み出すわけではありません。広く展開していくにはさまざまな人が同じ方向性で絡んでいく必要があります。この方向性を示すのがコンセプトです。

宅急便の成功は極論すれば小倉氏の作ったコンセプトだといってもよいでしょう。つまり、これこそが、上位レベルのマネジャーにコンセプチュアル思考が求められる理由だといえます。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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