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第10回 思わぬ落とし穴2 相手が敵に見える(2008.12.26)

インフルエンス・テクノロジーLLC  高嶋 成豪


 自分の思い通りにならない相手は、ほんとうにやっかいなものです。ネガティブな感情が湧いてくると、それを止めることは容易ではありません。以前、心理療法の大御所、アルバート・エリス博士のお話しをうかがう機会がありました。エリス先生は、ネガティブな感情は止められなくなるばかりでなく、みるみる大きくなって、怒りや落ち込みにつながりやすい、と強調していました。これは誰にでも起こりうるそうです。そんなとき、私たちはしばしばありもしない妄想を描いていたりもします。

「なんで私の上司はビジョンを示さないのだろう。いつまでたっても他のメンバーがやる気にならないのは、上司にビジョンがないから。売上とか短期的なことばかり言っている。マネジャーならリーダーらしくチームの方向性を打ち出すべきなのに、保守的過ぎるんだよ。リーダーはもっとリスクを冒さないと。本部長にもはっきり言ってほしいんだよ、もっと人員が必要だって。ああ、イライラするよな。こんなリーダーとは仕事したくない。 そんなダメ上司の元で仕事する私たちこそ、いい被害者だ。この思い、いつか思い知らせてやる!」

 頭の中でこんな独り言を言っているうちに、だんだん怒りがエスカレートしてしまう。みなさんは似たような経験ありませんか?あるいは似たような話を聞いたこと、ありませんか?怒りの感情だけではありません。

「あのひと、いつもうるさいんだよね。彼が動いてくれなければいい結果にならないから、依頼に行かなきゃならないは分かっているんだけど、きっとまた何か言われるよ。面倒くさいな。今日はよく考えて、明日、お願いにうかがうことにしよう・・・」

 こうしてためらっているうちに、結局何も話さないことになるかもしれません。人は「怠け心がでた」というのでしょうが、しばしば見られることです。怒りや怠け心、落ち込んだり悲しんだり。人って弱いなあ、と思います。

 これは地位や身分は関係ありません。12月24日の報道によると、東京大学の教授と准教授がセクハラとパワハラで懲戒処分を受けています(「日本経済新聞」12月24日夕刊3版18面)。何があったか存じませんが、ハラスメントはいけない、と頭では分かっているのに止められなくなってしまったんだろうな、と想像します。この先生たちは結局退職してしまったそうです。ああ、東大教授のポストを捨ててまで、こんなことしてバカだなあ、と思うけれども、考えてみれば先生といえども弱い人間に過ぎないのでしょう。

 こんなわけですから、「影響力の法則」の第一の法則「味方になると考える」といわれても、相手が思い通りにならないと、敵に見えてしまうのも無理ありません。味方と考えたらいいのは分かるけれども、そんなに簡単じゃない。うまくいかない相手は、こちらが望むことを妨げるのですから。私自身、過去を振り返ってみると、そのような経験があります。なかなか購入の意思決定をしてくれないお客、進言を聞かない上司など、私を妨害する敵だと感じたものです。特に若い、正義感が強い頃は、「上司はかくあるべき」などと思っていましたから、期待に反する現実には、ノーと言いたくなったものです。

 ではどう対応すればよいのでしょうか。まずは自分が他者を敵と見てしまうことを認めてしまいましょう。他者が敵に見えることは誰にでもあることです。それほど、人は強くありません。敵には恐れを感じます。怒りもあるでしょう。けれども、それはあたりまえ。敵を前に萎縮している、緊張している自分を認めましょう。そういう自分、かわいいではないですか。

 次に、こう考えてみてはどうでしょう。同じ人間同士、実は相手もこちらを怖がっているのかもしれないと。例えば、上司であっても、若い部下の方が正しいのではないか、などと考えているものです。技術革新の変化のスピードが速く、上司がすべてを知っていることは困難です。あらゆる面で上司が偉かった時代は終わってしまいました。今では、部下の方がよく知っていることが少なくありません。だとすれば、上司は部下に脅威を感じるはずです。あなたが内心嗤っているのではないかと、考えたりしています。こちらが敵と考える相手は、やはり敵(あなた)を前にしておびえているかもしれません。相手もかわいいものではありませんか。

 先日テレビを見ていたら、オリンピック競泳のメダリスト、中村礼子選手がでていました。彼女は他の選手が気になって仕方がなかった。その時は記録が伸びなかった、しかし、競争相手を意識せず、自分の泳ぎ方に集中していったら、日本記録を大幅に更新し、銅メダルを手にすることができたのだそうです。これは私たちの仕事にもいかせることだと思います。相手に敵意を感じているとき、実は相手に振り回されているのです。本来の目的を思い出し、正面きってにらみ合うのをやめてみましょう。
それよりも、自分のやるべきことに集中していたほうが、私たちは、周囲の協力も得られるようです。

 まずは、ここまで整理してみましょう。それだけでも、相手に対する影響力は高まるかもしれません。それでも不足だったら?それは次回お話ししましょう。

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6.まとめ
 ・(演習6)カレンシーを再考する
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著者紹介

高嶋 成豪    インフルエンス・テクノロジーLLC マネージング・パートナー

人材開発/組織開発コンサルタント。インフルエンス・テクノロジーLLC.マネージング・パートナー。ゼネラル・モーターズ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなどで人材開発に従事。現在リーダーシップ、コミュニケーション、チームビルディング、キャリア開発のセミナーを実施し、年間約1000名の参加者にプログラムを提供している。ウィルソンラーニング・ワールドワイド社によるリーダーシッププログラム、LFG(Leading for Growth:原著はコーエン&ブラッドフォード両博士の共著“Power Up”)のマスター・トレーナー。2007年『影響力の法則 現代組織を生き抜くバイブル』(原題“Influence without Authority”)を邦訳。コーエン&ブラッドフォード両博士から指導を受け、「影響力の法則」セミナー日本語版を開発。日本で唯一の認定プロバイダー。筑波大大学院教育研究科修了 修士(カウンセリング) 日本心理学会会員 ISPI(the International Society for Performance Improvement)会員 フェリス女学院大学講師

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