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コンセプチュアルスキルのことを概念化スキルということがあるが、概念化するとは、言語化することに他ならない

第3話:データから仮説を立てアクションをとる(2013.10.19)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆データを言語化し、本質を表現する

コンセプチュアルという言葉からは概念的な表現を連想するかもしれないが、コンセプチュアルのひとつの軸は、データと言語表現である。

目標を立てて仕事をすると、目標は計測可能なものであることが望ましい。したがって、数値で表現され、データとして蓄積され、分析の対象になる。ここまではいいと思う。問題はこの後だ。

データから何かを考えたり、決めたりするときには、言語化しなくてはならない。つまり、データに隠されている本質を言葉で表す。そして、以降は言葉を使って思考を行う。その意味で、言葉として表現することはコンセプチュアルな仕事術の基本中の基本である。

コンセプチュアルスキルのことを概念化スキルということがあるが、概念化するとは、言語化することに他ならない。


◆例で考えてみよう

こんな例を考えてみよう。単純化した例なので、細かなことは気にせず読んでほしい。

ある営業部では4月~9月に30億を売り上げることが目標となっていた。半分の期間である6月が終わった時点での売り上げは10億。仕掛の案件になっているものが8億あるが、すべて受注できるかどうかは分からない。

これらはデータであるが、この状況をどのように見るかは言葉で表現される。たとえば、目標達成が不十分であるとするか、予定通りだだとするか。7~9月期のアクションプランを立てるに当たってはこの判断が重要になってくる。

ちょっと脱線するが、ここで、「残り20億だが、8億は案件化されているので、半分受注できるとしてあと16億、頑張ろう。」としか言わないようなマネジャーがいる。

そしてもっともらしく、これが定量的な管理だといっていたりするが、これは単に判断をしていないだけで、論外だ。判断をするには、データ(数字)が内包しているもの(概念・本質)を洗い出し、言語化した上で判断をしなければならない。


◆判断とは主観である

さてもとの話に戻ろう。期の半分が過ぎたところで30億のうちの10億完了と仕掛8億という数字をどのように解釈するか。

過去の実績だとか、仕掛の各案件の詳細な状況の分析などはあるが、最終的には主観的な判断になる。たとえば、ある人はこの状況を

(1)順調である

と判断するかもしれない。ある人は同じ状況を

(2)予定より進捗が遅れているが、現状のままで十分に挽回可能である

と判断するかもしれない。また、別の人は

(3)遅れており、このままでは目標の達成はできない

と判断するかもしれない。

ここで大切なことは、判断は主観的なものであると同時に、「言葉」で表現されて初めて意味を持つことである。


◆メトリクスを取り入れる難しさ

主観的とか、言葉で表現することが「気持ち悪い」と考える人もいる。そういう人たちは言葉をメトリクス(指標)化して考えようとする。たとえば、「予定通りとは、プラスマイナス5%以内のことをいう」というように「言葉」を定義するわけだ。

こうすると、状況の共通認識を容易にするという意味でよいことだ。しかし、しばしばあるように、間違った認識を共有する危険性もある。上の例のような微妙な状況においてはメトリクスが機能しないことが多い。そのようなケースは直感や主観がものをいうのだ。

言葉を定義する場合にはこの点を心得ておく必要がある。


◆アクションが言葉から起こる

そしてアクションは言語化された表現(状況認識)に基づいて行われる。

どれが正しいという問題ではないが、7月~9月の進め方については判断によって変わってくる。

たとえば、(1)だとこのまま行こうという判断をするだろう。(2)であれば若干問題点の洗い出しを行い、やり方の改善をしようという判断になるかもしれない。(3)であれば問題点の分析とやり方の見直し、場合によっては目標の修正を行うという話になってくるかもしれない。

そして、このような抽象的なレベルでの判断と問題解決の方向性を決めた上で、(2)や(3)であれば、具体的な改善方法、あるいは、新しいやり方を決め、進めていく。


◆仮説に基づきアクションをとる

ここで重要なことは言葉による状況判断とその判断に基づく対応はあくまでも主観に基づく仮説であるということだ。

錯覚してはならないのは、言葉を定義している場合には決まったものであり、仮説ではないような錯覚に陥るが、仮説は仮説である。ただし、その仮説は組織で共有された仮説であり、仮説に基づくアクションを行う際には重要な意味がある。関係者のベクトルがその方向を向くため、仮説が現実になる可能性が高まる。

仮説であるので、必ずしもそのとおりになるとは限らない。従って、適切な周期で仮説の検証をする必要がある。たとえば、(2)予定より進捗が遅れているが、現状のままで十分に挽回可能であるだと判断したとすると、本当に予定通りに進んでいくかどうかを見守って、仮説の検証をしていく必要がある。つまり、売り上げの推移をこれまでより細かく見て行かなくてはならない。そして、そのデータより仮説が正しいかどうかを検証する。

そして、仮説が正しそうならそれでいいし、仮説が適切でなければ仮説を変える必要がある。ここでまた、新たにデータから。そして、その時点で適切だと思われる対応を決め、それを具体的なアクションに落として実行していく。実行に際しては、同じように仮説検証をしていく必要がある。


◆見える化と言語化について

上に述べたメトリクスと併せて、目標達成の活動では見える化をすることが多い。最後にこの問題に触れておきたい。

見える化とは、データを可視化して、視覚的に状況を共有しようという考え方で、マネジメントにはなくてはならない手法である。見える化をすると、言語化が必要ないように感じる人もいると思うが、これは錯覚である。

むしろ、見える化の有効性は言語化の質に依存すると言ってもよい。見える化されたデータを言語化し、議論をしなくてはならないからだ。このときに、言語とデータが不整合になる可能性があるが、それについては見える化により是正がかかる。

その意味で、データから仮説を立て発見を導く中では見える化は非常に重要な役割を果たすことになる。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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