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第3回 第2の特徴〜自分の行動を他人の視点から振り返り、修正する(2013/03/22)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆期待に応えるには自分が与える影響を知ることが必要

前回期待を把握して、期待に応えるという話をしたが、期待に応えるためには、自分が相手に対してどういう影響を与えているかを適切に知ることが必要である。期待は把握できても、自分の与える影響を知らないと、良かれと思った行動が思わぬ事態を招くことがある。

そのような事態を防ぐためには、自分の行動を相手の立場から眺めてみて、問題があれば修正することだ。特に重要なことは相手の持っている「感情」と「前提」を相手の立場になって探してみることだ。

◆あるボタンの掛け違い

10年くらい前の話である。某ITベンダーのプロジェクトマネジャーAさんは、10年来のつきあいのある顧客のBから絶大なる信頼を得ていた。期待に応える上でこれはとても大切なことで、信頼をしているのでそのBさんはAさんには協力を惜しまなかった。

あるプロジェクトで、Aさんが雑談でBさんに教えた業務革新の事例で問題が起こった(具体的な仕様は割愛)。システム更新に伴うユーザ業務のあり方について言ったことについて、Aさんはシステムをそのようにするものだと思ったBさんが、業務方法の変更の根回しを始めた。

しかし、Aさんはそのような話は持ち出すことなく、仕様承認の段になって顧客側からあの話はどうなったのかと切り出してきた。実はAさんが話したのは別の会社でそのようなやり方をしているという事例紹介にすぎず、今のプロジェクトでそれを実現するつもりはなかった。もちろん、顧客のオリジナルの要求にも入っていない。多くの人は、どう考えても早とちりしたBさんが悪いと考えると思う。

この話がこじれ、Bさんは社内で責任追及をされ、Aさんは顧客側からの要望でプロジェクトマネジャーを交代することになった。10年経ち、お互いに当時の立場から代わっている。それぞれの立場で出会うことはあるらしいが、いまだに氷解とはいかないそうだ。

◆Aさんの問題

10年前に戻って改めて考えてみよう。AさんはBさんには言わなかったが、当時、コミットしているわけでもないし、約束したわけでもない。Bさんとの話の流れで次の展開の参考になるかなと思って紹介しただけだという。Aさん側に問題がなかったのか?あったとすれば、Aさんのどこに問題があったのだろうか。

このケースの場合に問題なのは、AさんがBさんの感情と前提を見落としていることだ。Bさんの前提は、Aさんとシステムのことについて話し合ったことは、すべてこのシステムのことであることと前提、それからAさんを全面的に信頼しており、Aさんのいうことはなんとかして通すという感情を持ってる。

このような事態を引き起こしたのは

相手のことを考えることと相手の立場で考えるの違い

である。上の例のAさんはBさんや顧客のことを考えていたが、Bさんの立場で考えることができなかったので、Bさんの前提を読めなかったのだ。しかし、Bさんの立場になってみると、ユーザにメリットがあること(で信頼するAさんがいうこと)は何でも取り込むという前提を発見するのはそんなに難しいことではない。

こういう行動特性を持つプロジェクトマネジャーは少なくない。

◆交渉の場面で

さて、こういった議論になるのは交渉の場面が多い。交渉において2つの違いを改めて考えてみよう。

相手のことを考えると言う場合には、あくまでも自分たちの利益が優先することを前提にして、その中で最大限の譲歩をする。この場合、基本的にはゼロサムであり、日本語として正確に言えば、相手のこと「も」考えるである。

これに対して、相手の立場で考えるという場合には、自分たちの利益の優先を前提にしない。そして、顧客の立場で考える。ここで勘違いしてはならないのは、損をしてもいいから顧客の立場で考えるということではない。顧客の立場で考えなくてはならないのは、如何に自分たち(顧客)の利益を大きくできるかではなく、お互いにハッピーになるにはどうすればよいかを考えてみる。極論すれば、

「顧客の立場で自分たちの利益を最大にするにはどうすれるか」

である。

すると、すぐにゼロサムではダメで、パイを大きくする方法に意識がいく。もちろん、そう意識したからパイを大きくするよい方法を思いつくことができるわけではないが、それはそのような方向性を出して、相手と一緒に考えればよいことだ。見つかれば、利益を前提としていなくても、結果として利益がついてくる。

◆本当にセンスのいいプロジェクトマネジャーは

ここまででも、プロジェクトマネジャーとしてのセンスはなかなかのものだと思うが、本当にセンスのよいプロジェクトマネジャーはパイを大きくする方法を見つけることがうまい。そのアプローチとして、自分と相手の立場を繰り返し使い分けて考える


まず、自分が顧客だったらこうしたいと考える。つぎに、その案に対して、自分はどう思うかを明確にし、相手のことを考えながら修正案を考える(ここで相手の利益を無視して強行突破しようとすると永久に案が見つからない)。その修正案を今度は再び、顧客の立場で考えてみる。そして、その修正案を起点にして、自分は顧客としてどうしたいかを考える。それを何度か繰り返すうちに、バランスするポイントを見つけることができる。

つまり、相手のことを考えることと相手の立場で考えることを両方できるのがセンス
のよいプロジェクトマネジャーである。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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