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第6回 第5の現場力〜調整力(2008.03.31)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆調整力不足の原因は本当に問題なのか?

昔のプロジェクトマネジャーと最近のプロジェクトマネジャーの違いで、「調整力」の違いを上げる人が少なくない。

これは問題かというと、必ずしもそうとはいえない。調整力とは何かという議論もあるが、一般的なイメージでいえば、調整をできるだけしなくて済むように、プロアクティブにものごとを決めながら進めていくのがプロジェクトマネジメントだという言い方もできるからだ。

では、なぜ、調整力の不足を問題だと思う人が多いのかというと、2つの理由がある。ひとつはプロアクティブに進めていないから。たとえば計画段階で決めておけば「決めごと」で済むようなことが、時間がないとか、まだ、はっきりしないといったことを理由に、先送りをしてしまうと「調整」が必要なおおごとになることは少なくない。このようなケースは相当な調整力がないとさばけなくなっている。

もう一つは、プロアクティブに進めていっても起こる問題は起こる。問題が起ってしまえば、調整しないと事態の収拾ができなくなる。その意味では、最初のケースと同じ状況である。


◆調整のパターン

さて、ではなぜ調整ができなくなったのか?あるいは何ができれば調整できるのか?という問題を考えてみよう。

調整は何かの対立や競合が発生した際の解決方法であるが、3つのパターンがある。

一つ目は「三方一両損」の世界だ。日本ではこのパターンが多かった。これはゼロサムを前提にしているが、日本のような資源の限られた国土でたくさんの人が生活をする環境が影響をしているのだと思う。この場合には、如何に損失を配分するかが調整の対象になることが多い。

2つ目はゼロサムでも誰かが利益をすべてとり、他はマイナスになるような調整がある。顧客と提供者の間の調整はこのパターンが多く、提供者は以下にマイナスを少なくするかが調整になる。

3つ目がいわゆるWin-Winである。上の2つがゼロサムであることを前提にしているのに対して、Win-Winはプラスサムを前提にしている。この場合、調整とは両者の利益のバランスをとることではなく、利益を創造することになる。


◆調整に必要なスキル

ゼロサムの調整においてはバランスをとることが重要である。ところが3つ目では利益創造ができることが重要であり、その意味でスキルも異なる。が、最もコアなスキルは同じではないかと思う。

それは、仮説を作って、その仮説を中心に調整していくというスキルである。ゼロサムの調整の場合、仮説は必要ないと思われるかもしれないが、「落とし処」が重要であり、お互いが相手がどこで納得できるかという仮説をどれだけうまく作れるかがバランス感覚に他ならない。

Win-Winの調整の最大のポイントは、どのような仮説が作れるかである。Win-Winの調整とゼロサムの調整の本質的な違いは、ゼロサムの調整がその時点での問題解決であるのに対して、Win-Winの調整というのは将来的な問題解決である。つまり、確実にその通りに問題解決できるという保証はないのだ。その中で調整を仕切るには、以下にゴールの構成に使っている仮説が納得できるかが大問題になる。

たとえば、納期を前倒しすることが望まれたとしよう。そこでプロジェクトとしては、パフォーマンスの高い人材を使うので予算を積み増してしてくれと要求したとする。ここでは、メンバーのパフォーマンスを上げるとチームのパフォーマンスが上がって、結果としてリードタイムの短縮につながるという仮説がある。ここで、問題はこの仮説がとれだけ信じるに足るかだ。


◆調整の達人を目指そう!

こういう例を出すと常に積み増しのようなイメージを持つと思うので、ひとつ、知人のプロジェクトマネジャーで周囲から「天才」だと言われているA氏の例をご紹介しよう。A氏は大手のSI企業でプロジェクトマネジャーを務めている。同僚のA氏評は、

(1)まず、よほどのことがない限り、契約にない要求も引き受ける
(2)当然、予算も納期もつじつまがあわなくなる。そこで、必ず、顧客が得をしたと思うスコープ削減案を提案する

というものだ。同僚はAマジックと呼んでいるらしい。これは理屈では分かる。よほどしっかりとしたユーザで、社内予算の獲得のときに徹底的にスコープの絞り込みをしていない限り、A氏がついていくようなポイント、つまり、スコープを削ることがより目的達成に寄与するポイントはあると思う。ただし、このようなポイントを見つけるためには、顧客のビジネスと社内政治に通じていないとできず、営業でもこれは相当難しい芸当である。それが、受注後のやりとりで把握できるというのはやはり、周囲が言うようにコミュニケーションの天才なのだろう。

みんながA氏のようになれるどうかは微妙だが、現場力としての調整というのは、QCDSを調整して、目的達成を実現することである。どのようなレベルにしろ、この意味での調整力は身につける必要がある。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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