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第58話:イノベーションの視点(2012/11/20)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆技術ライフサイクル

フューチャーセンターのムーブメントを見ていると、イノベーションの立ち位置がどんどん変わってきていることを実感させられます。

一昔前はイノベーションというと、技術イノベーションを意味していました。もちろん、今でも技術のイノベーションというのはあるわけですが、ビジネスチャンスとして注目されるのが技術のイノベーションからほかに移っています。

技術には技術ライフサイクルがあります。表現はさまざまですが、技術はその誕生から、使われなくなるまでを以下の4つの段階に分けることができます。

(1)揺籃期(生まれる)
技術のユーザの求める機能は不明確であり、多くの考え方が提唱される
(2)成長期(育つ)
ドミナントデザインが確立され、技術に対して共通したイメージが生まれる
(3)成熟期(働く)
技術のユーザは技術の効用を重視
(4)衰退期(衰える)
技術のユーザはその技術に投資をしなくなる


◆技術ライフサイクルとイノベーション

揺籃期はコンセプトが生まれますが、コンセプトを実現する技術に対して求められるものははっきりしません。この段階が技術そのものがイノベーションの対象になる段階です。みんなが自分たちの技術が主流になることを夢見て、さまざまなアイデアを出します。

そうしているうちに、同じ方向を向く複数の技術が現れるようになり、だんだん、その技術のイメージが固まってきます。このような技術をドミナントモデルといいます。ドミナントモデルが登場するのが成長期です。技術だと分かりにくいので、スマートフォンという製品を例にとって説明しますと、スマートフォンのドミナントモデルは、

ハードの操作ボタンなどを最小限に抑え、ほとんどの操作がタッチパネルで行うことができる、電話機能付きの超小型コンピュータ

といったところでしょうか。このドミナントモデルを確立させたのはアップルです。ドミナントモデルが登場すると、イノベーションの対象は技術そのものよりも、適用方法へ移っていき、技術は改善の対象になります。

成長期である程度、その技術が普及してくると、成熟期に入ります。成熟期では技術のユーザは投資対効果を重視します。この段階でのイノベーションの対象はコストとビジネスモデルになります。これまでの半分くらいのコストで活用できるとか、あるいは、新しいビジネスモデルにより技術の投資対効果が倍増するといったイノベーションを求めて、技術投資をするわけです。

やがて、技術投資が行われなくなる時期がきます。これが衰退期です。


◆技術イノベーションが終わったという意味

さて、今、盛んに技術によるイノベーションの時代は終わったと言われています。これは、技術ライフサイクルでいうところの揺籃期の技術イノベーションが少なくなってきたということを意味しているのでしょうか?そういうことではありません。揺籃期の技術イノベーションは相変わらず、起こっています。

少し前までは、揺籃期の技術イノベーションに変わって、成長期における適用方法のイノベーションが注目されていました。新しい技術を適用することによって、新しい製品やサービスが生まれるというイノベーションです。このようなイノベーションもいまでも起こっています。

これらは技術が製品やサービスの提供者の事業環境を変えるというイノベーションでした。ところが、いま、着目されているのは、提供者ではなく、製品やサービスを使う側の変化です。端的にいえば、その技術が生活や社会を変えるかどうかに焦点があたっており、そのような変化をイノベーションとみなしています。これが、技術によるイノベーションが終わったの意味です。


◆生活を変えるイノベーション

さて、話は変わりますが、このようなイノベーションを起こすことは実はかなり難しいことです。イノベーションの取り組む人はビジネスに携わっているわけですが、イノベーションをドライブするのはビジネスにおける問題意識ではなく、生活における問題意識だからです。つまり、ビジネスマンとしての思考を一旦忘れ、生活者に戻ります。そして、生活者として何かの問題を見つけ、それを解決していく。このようなスタンスが重要になってきています。

たとえば、ホンダの出発は、中小企業のオヤジだった本田宗一郎が闇市に買い出しにいく奥さんのために、自転車に米軍が残していった通信機用のエンジンをつけ、それがクチコミで広がっていったというエピソードがあります。原動機付き自転車ですが、原動機付き自転車は女性にも簡単に乗れたことから、人びとの生活を大きく変えました。

この際、自社の事業と問題の距離感というのが問題になります。スタートアップを視野に入れると、どのような距離があっても構いませんが、事業基盤があるところに、それを活かさない方法は考えないでしょう。たとえば、中小企業のオヤジが闇市に買い出しに行かなくても済むように、食料品をつくろうとはかんがえないでしょう。

重要なことは自分たちの技術を活かすのではなく、自分たちが活かされるような問題を考えることです。こういう活動をフューチャーセンターでできるといいなと思います。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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