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第21話:CDPM:カスタマードリブンプロジェクトマネジメント(2010/08/10)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロダクトアウト vs マーケットイン

プロダクトアウトとマーケットインという言葉を聞かれたことがありますか?

プロダクトアウト(product out)とは、ものを作るときに作り手の理論を優先させる方法です。「作り手がいいと思うものを作る」「作ったものを売る」という考え方をします。

これに対して、マーケットイン(market in)とは、市場や顧客ニーズを優先し、顧客視点で商品の企画・開発を行い、顧客に提供していきます。「顧客が望むものを作る」「売れるものだけを作り、提供する」という考え方をします。

プロダクトアウトとマーケットインというのはある意味で対極にあり、その商品のコンセプトを決めることでもあります。この2つに共通しているのは、顧客なり、メーカが何を作ればよいかを知っていることが前提になっています。


◆ソニーはなぜiPodを作れなかったのか

しかし、世の中にはメーカも顧客のその時点では何を作りたいか分からないケースがあります。例えば、Apple社が2001年に発売したiPodという商品を考えてみましょう。

この商品は従来、ウォークマンが確立してきた携帯型オーディオのコンセプトを大幅に変えました。それまでの携帯型オーディオは、音楽をCDなどのメディアで購入(レンタル)し、それを録音して持ち歩くものでした。つまり、AV商品だったわけです。それに対して、iPodは一曲ずつ、曲を購入して聴くというコンセプトを確立しました。アイデアとして無かったわけではありません。ソニーがすでにICウォークマンで自グループで権利を保有する楽曲を対象に実現していたことです。しかし、ソニーのそれは単なるプロダクトアウトだったように思います。

これに対して、Appleは多くのレーベルと交渉し、多くのレーベルがそこに参加するという音楽市場を作ってしまいました。さらに、MP3で音質が悪いことを逆手にとり、スピーカーやイヤホンをはじめとするアクセサリーの一大市場も作ったわけです。

これも興味深いところです。ソニーのICウォークマンはAV商品です。あくまでも音質にこだわり、高い音質の音楽を移動しながら聴くための商品でした。


◆マーケットアウトは商品と市場を作る

ところが、iPodはAV商品とは言えないものです。最初にジョブスがiPodをプレゼンするときに、アランケイのDynabookの実現だとプレゼンをしました。著者はLisaからの筋金入りのAppleファンなのではっきり言って違和感がありました。AVプレイヤーだと思っていたからです。

今、振り返れば著者はジョブスの構想が全く見えていなかったことになります。今、iPod、iPhone、iPadがダイナブックの実現だと言われると全く違和感がありません。そこに、新しい形のコンピュータを中心とした市場ができたわけです。

このように、プロダクトアウトでもマーケットインでもなく、商品を中心にして、市場そのものを作り上げていくようなマーケティングの方法があります。これをマーケットアウトと言います。


◆マーケットアウトの方法

では、マーケットアウトはどのように行われるのでしょうか?一つはアップル方式で、ジョブスのようにビジョナリーなリーダーが存在し、そのリーダーのビジョン実現としてマーケットアウトの展開がなされるケースがあります。コンシューマー商品はこのパターンが多いと思われます。

もう一つのやり方はマーケットの潜在的ニーズを把握し、それを実現していくというやり方があります。例えば、IT製品でよく行われる方法で、製品のテストフェーズや立ち上がりの段階で顧客に製品を使って貰い、その使用法を分析しながら、改善を行いながら製品を完成させていくプロトタイピングがあります。顧客側にも最初から決まった使い方があるわけではく、問題解決の手段にならないかを探っていきます。
作り手は、いろいろな形でそれを支援していきます。そして、最終的には製品に反映していきます。


◆受注型プロジェクトに必要なマーケットアウト発想

さて、このように顧客(市場)と作り手の関係を考えてみたときに、受注型のプロジェクトをどのような発想でマネジメントすべきなのでしょうか?受注するわけですから、原理的に考えてプロダクトアウトという選択はありません。マーケットインか、マーケットアウトか。ニーズに答えていくという意味ではマーケットインだと考えることができます。

ところが、特にSIプロジェクトでは、おおよその方向性は決まっているのだが、顧客のニーズそのものが明確とは言えないようなケースが少なくありません。プロジェクト活動をするという場合は、このようなケースを何とかしたいからと言ってもよいかもしれません。

このような状況でマーケットインの発想に固執して、ニーズが固まるのを待つと、時間だけがたち、成果がでないプロジェクトになりかねません。ここで必要な発想はマーケットアウトの発想です。顧客が実現したい、つまり、顧客の試行錯誤をサポートするようなチームを作り、顧客が早くゴールを見つけることができるようにすることによって、プロジェクトのリードタイムを短縮するという発想が必要になります。

もちろん、契約的な工夫など実現にはいくつかのハードルがありますが、基本的にはシステム開発のリーダーに顧客が就任し、顧客のペースで進めて行きます。

実は、このような形態で行うSIは、従来のSIとは本質的に異なるサービスです。
従来のSIサービスはモノを提供するサービスですが、このような形態で行うサービスはサービスそのものが商品であり、そこでできるシステムは副産物になります。だからといって、専門家の派遣をする人材派遣のサービスではありません。あくまでも顧客と一緒にシステムを作ることに責任を持つわけです。

製品ライフサイクルが短くなり、初期計画のままで走ってしまうと完成した頃には売れない商品になることが珍しくなくなっています。それに対応し、プロジェクト運営もだんだん柔軟性が求められるになってきています。


◆マーケットアウトを実現するCDPM

その際に必要なプロジェクトマネジメントはCustomer-Driven Project Management(CDPM)と呼ばれるもので、上に述べたように顧客を中心としたチーム(CDT:Customer-Driven Term)によってプロジェクトを進めていくという方法です。広い意味では、リードユーザを取り込んだ商品開発(リードユーザ法)などもこの範疇に入ってきます。

この方法はある意味で、アジャイルであり、ある意味でアジャイルより顧客ニーズの実現に効果的な方法です。今後、多くのプロジェクトがCDPMでマネジメントされるようになっていくことが予想されます。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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