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第13話:プロジェクトマネジメントのオーナーシップ(2010/02/22)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆2人の上位管理者

プロジェクトの上位の管理者は2人います。分かりますか?

一人はプロジェクトスポンサーです。もう一人はプログラムマネジャーです。このようにいうと混乱してしまうかもしれませんね。

もう少し、具体的にいえば、

・ビジネスに関する上位管理者
・プロジェクトマネジメントに関する上位管理者

です。

10年近く前だと思いますが、米国のIBM社がプロジェクトマネジメント担当役員、いわゆるCPO(Chief Project Officer)を置いたことが日本でもニュースになったことがあります。日本のメディアの取り上げ方をみていると、キャリアの問題として取り上げていましたが、これはもっと重要な意味があります。「プロジェクトマネジメントのガバナンス」の問題で、プロジェクトマネジメントのオーナーシップを設置したことです。今でも、日本の企業で、CPOをおいている企業はほとんどみかけません。まれに、中堅企業で、役員がPMOのマネジャーを兼務している例をみることがあるくらいです。


◆チーフオフィサーとオーナーシップ
チーフオフィサーというのは業務のオーナーシップを持ち、戦略実行を取り仕切る役割です。つまり、CEOが決定した経営戦略に基づいた機能戦略の決定を行うことがオーナーシップで、その推進の最高責任者はチーフオフィサーです。たとえば、CHOであればヒューマンリソースのオーナーシップを取り仕切ります。平たくいえば、CHOが打ち出す人事戦略や人事施策は企業として打ち出しているもので、それは守られる必要があります。

チーフオフィサーがいないということは、組織の中に、プロジェクトマネジメントに関するオーナーシップが存在しないということになります。つまり、プロジェクトマネジメントについていろいろな施策があっても、その遵守は組織的には強制されるものではないということです。

たとえば、職位と決済権限というのはどこの企業でも結びついています。つまり、CHOが人事に関するオーナーシップを持ち、その中で権限が決まっているからです。この権限を無視して活動したら何らかの懲罰があります。これに対して、プロジェクトマネジメントに対するプロフェッショナル制度を制定している企業はたくさんあります。大抵の企業は、プロフェッショナルのレベルと、マネジメントできるプロジェクトのランク(規模など)を結びつけています。ところが、オーナーシップが存在しないので、これは「できるだけそのようにしようね」という世界に過ぎません。


◆プロジェクトを管理する2系統

さて、最初の話に戻ります。プロジェクトマネジャーの上位組織は

プロジェクトマネジャー
   → プロジェクトスポンサー → CEO, CFO, CIO

というビジネスラインと

プロジェクトマネジャー
   → プログラムマネジャー → CPO

というプロジェクトマネジメントのラインの2系統があります。

ところが上に述べたように、現実にはオーナーシップがなく、PMOは設置しているものの、権限がなく、プロジェクトスポンサーからの依頼により、支援をするにとどまっています。民主党政権になって、国家戦略室というのができましたが、根拠法がなく、活動が構想通りには言っていませんが、ちょうどそんな感じです。

このため、マネジメントラインは、プロジェクトスポンサーの1系統だけになってしまうのが現実です。つまり、プロジェクトスポンサーの判断で、プロジェクトマネジメントのやり方が決まってしまうわけです。片肺飛行状態です。


◆片肺飛行が引き起こす問題

これが時として、大きな問題を引き起こしています。その典型がプロジェクトをやめれないという問題です。プロジェクトマネジメントのオーナーシップがあれば、プロジェクトの中止は予め定められたプロジェクトマネジメントの規則でできます。よくIT企業で、「顧客のいるプロジェクトなので、中止というのはあり得ない」と言いますが、それこそ、あり得ません。経営戦略とプロジェクトマネジメントの戦略が一体化していれば、ペナルティを払おうが、その顧客を失おうが、戦略との合理性のある中止というのはあるあり得るわけです。たとえば、経営戦略、財務戦略との整合を以て、半期上延期になったプロジェクトは中止するといったルールを設定できるわけです。

にも関わらず、あり得ないというのは、実はビジネスラインだけでプロジェクトを動かしているからです。ビジネスラインだけで動かせば、商品開発であればROIというブレーキが作動することはあっても、ITのような受注開発型のプロジェクトであればほとんどブレーキになるものはありません。やっぱり、お客様第一ですし、財務的な判断よりは優先順位が高くなります。ところが、こんなことをやっていたら、経営戦略の実行はおろか、企業の屋台骨を揺るがし兼ねません。


◆解決策としてのプロジェクトスポンサーシップ

では、どうすればよいのでしょうか?

現実的に考えて、これから5年くらいの間に、日本の企業の多くにプロジェクトマネジメントのオーナーシップが設置されるというのは考えにくい状況にあります。すると、スポンサーシップがある程度、プロジェクトマネジメントのラインの役割を果たす必要があります。たとえば、プログラムマネジメントやポートフォリオなどです。もちろん、ビジネスラインですので、自分たちのビジネスを犠牲してまで、プロジェクトマネジメントに取り組むという選択はあり得ないと思いますが、少なくともプロジェクトマネジメントを組織マネジメントの問題として考え、ビジネスとWin−Winの関係になるように持っていくことは必須だと言えます。

これに気づいて、実際に取り組んでいる企業もありますが、これからこのようなフォーメーションが増えてくるかもしれません。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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