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第125話:地図よりコンパス(2017/07/26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆計画が難しいプロジェクト

プロジェクトを進めていくときに、目的に応じて計画を作り、計画を頼りに進めていくが、計画通りにはいかないケースが少なくない。

そのような場合には計画を変更して、新しい計画で進めていくのが一般的な流儀だが、イノベーションのように全く新しいことを行うプロジェクトでは、新しい計画が作れないことも珍しくない。

このような場合に、無理やり計画を作って進めていっても、計画を頼りにすることはできないし、計画があることが混乱を引き起こすこともある。どうすればよいのだろうか?


◆計画が難しい場合の2つの対応方法

基本的に、計画が難しいプロジェクトの対処方法は2つある。一つは、計画や管理を厳しくすることで、もう一つは逆に計画や管理を緩くすることである。

具体的な方法としては、前者は

・計画や管理のサイクルを短かくする
・リスクを徹底的に管理する

といった方法がとられることが多い。後者では、

・計画の範囲を狭くする
・できるだけ現場の判断に任せる

といった方法がとられる。

どちらが良いかは一般的に論じるのは難しいが、強いて言えば、前提に着目し、前提が変化が想定できる場合には前者、できない場合には後者が適しているといえる。
マネジメントの手法としては、前者の場合はPDCA、後者の場合には例えば、OODAといった方法が考えられる。OODAについてはPMスタイル考の115話に記事を書いたのでそちらをお読みいただきたい。

【PMスタイル考】第115話:PDCAからOODAへ

さて、この問題はこれからどうなるのだろうか?


◆「地図よりコンパス」

そこで思い浮かぶのがMITのメディアラボの所長である伊藤穣一さんの「地図よりコンパス」という言葉だ。

この言葉は、伊藤さんがMITのメディアラボの所長に就任されたころに言われた言葉で、最近、9つの指針をまとめた書籍「9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために」で9つのプリンシプルの一つとして取り上げられ、解説された。

伊藤 穰一、ジェフ・ ハウ(山形 浩生訳)「9プリンシプルズ:加速する未来で勝ち残るために」、早川書房(2017)

ちなみにこの本では坂本龍一さんが興味深いコメントを寄せられている。

坂本龍一氏推薦
「ぼくもジョーイの『地図よりコンパス』を指針にしているよ」


◆地図通りにいかないときにどうするか

プロジェクトのイメージは、目的を定めて、その目的にたどりつける計画を作り、その計画を頼りに進んでいくというものだった。伊藤さんのいう地図というのは計画のことだ。もっとも地図がいらないと言っているわけではない。むしろ、地図があることが前提である。

しかし、イノベーションのような分野では、地図に示されている通りにはいかない。そのような場合には、出発点に戻って計画を作り直すのではなく、迂回し問題を乗り越えていくことが多い。

つまり、方向性を確認しながらとにかくその方向に進んでいく。このような行動はコンパスがあって初めて可能になる。

ただ、コンパスを使わずに、あてずっぽうで進んでいくプロジェクトも少なくない。その理由としては、そもそも地図があっても方向が示されていないケースが圧倒的に多い。例えば、ITプロジェクトをクライアントの要求を実現するだけのために行っているようなケースがそうだ。


◆地図よりコンパスの例

地図よりコンパスのプロジェクトの例を紹介しよう。ちょっと古い話になるが、3Mのポストイットの開発だ。ご存知のように、ポストイットは剥げやすい接着剤をベースにした商品だが、その接着剤は最初からそのようなものを作ろうとしたわけではなかった。

もっと強力な接着剤を作ろうとして偶然できた接着剤だった。

そこで、何に使えるかを考え、改良してできたのがポストイットだったのだ。これは、地図を頼りにせず、コンパスで方向性を重視して進んだ結果だといえる。この場合の方向性としては、(顧客に)役立つ、経営戦略実行に役立つといったものだった。


◆目的をどう扱うか

そこでプロジェクトマネジメントとして起こる問題は、目的をどのように扱うかだ。イノベーションプロジェクトと一般的なプロジェクトの違いはあるかもしれないが、プロジェクトは目的を定め、それを実現するために行う。その目的には、背景になる戦略などがあり、一般には目的を変えることはプロジェクトのやり直しと位置付けられる。

ここで、地図という計画に何が記されているかが問題だ。地図には道が書かれている。画でいえば、例えばWBSに相当するものだろう。つまり、方向性を頼りに進めるというのは目的を達成するために、違った道を通るということに他ならない。これはイノベーションプロジェクトでも変わらないと思われる。


◆計画は地形のみを示した地図

このような考え方は、本来のアジャイルなプロジェクトの進め方である(現実には異なることが多いが、、)。言い換えると、地図よりコンパスとは、アジャイルなプロジェクトの進め方を推奨していることになる。

つまり、地図には地形のみが記されており、どの道を通るかは書かれていないのだ。計画の位置づけはそのようなものなのだ。


◆関連するセミナーを開催します
━【開催概要】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ◆PDCAとOODAの統合によるコンセプチュアルプロジェクトマネジメント◆(7PDU's)
  日時・場所:【Zoom】2024年 06月 06日(木)9:30-17:30(9:20入室可)
     【Zoomハーフ】2024年 07月 13日(土) 13:00-17:00+3時間
     【Zoomナイト】2024年 05月 15日(水)17日(金) 19:00-21:00+3時間
      ※Zoomによるオンライン開催です。
      ※ハーフセミナーは、事前学習が3時間あります
      ※ナイトセミナー(事前学習3時間)は、2日間に分割して開催します
      ※少人数、双方向にて、演習、ディスカッションを行います
  講師:鈴木道代(プロジェクトマネジメントオフィス、PMP、PMS)
  詳細・お申込 https://pmstyle.biz/smn/conceptual_ooda.htm
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 ※Youtube参考動画「OODAループ
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 【カリキュラム】
  1.計画のできないプロジェクトをどのように管理するか
  2.PDCA再考
  3.OODAの概要
  4.OODAに必要な考え方
  5.PDCAとOODAの統合によるコンセプチュアルなマネジメント
  6.OODAとアジャイルプロジェクトマネジメント
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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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