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第120話:全体が意味することは何なのか(2016/12/27)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆全体像が見えない、、、

今年最後のPMスタイル考は「全体像」をテーマにしてみたい。

全体最適と部分最適の議論を始め、全体像を捉えることの重要性が指摘されることが多いし、実際に全体像が見えていないことで企画や提案が受け入れられないことは少なくない。ところが全体像を適切に捉えることはできないことが多い。そもそも、全体像を捉えるとはどういうことかを理解できていない人も少なくない。

たとえば、上司に提案したり、顧客に提案したりする際に、別段、間違ったことは言っていないのだが、受け入れられない、表現を変えてみてもうまく行かないといった場合によくあるのは全体像を捉えていない提案になっていることだ。

最近ではビックデータや人工知能などで、すべての部分(ファクト)を見ることで全体が分かるという考え方も出てきたが、これもちょっと違和感がある。

全体像を捉えるというイメージは、ファクトA、B、Cがあったときに「要するに何なのか」、「全体が意味することは何なのか」と考え、Dではなく、Xという答えを生み出すことである。


◆全体像を見ていない例

全体像を見ていないというのはどういうことか、もう少し具体的に考えてみよう。

たとえば、スケジュールが遅れているプロジェクトで要員が不足しているので計画の変更を含めて追加してほしいと上司に提案したときに、うまく行く人と行かない人がいる。この違いは、全体像を捉えているかどうかだ。

スケジュールが遅れているのはファクトだし、直面している要員不足もファクトだ。
また、プロジェクトマネジャーレベルになると部門の要員の事情などのファクトもある程度把握できているだろう。

ところが、これらのファクトを並べて、スケジュールが遅れていて、要員が足らないので計画を変更して、要員を追加してほしいとリソース管理者に要望しても通らないことが多いのだ。


◆多様な視点を持ち込み、全体像を考える

リソース管理者を動かすことができない理由は、結局これらのファクトから言いたいことがうまく示せないことだ。このままで進んでいくとスケジュールが遅れるだろうというファクトの延長線上の推測、つまり「スケジュール」の視点からしか示せない。

それ以外の視点、例えば、「プロジェクトの成果」、「顧客のニーズ」といった視点から言えることも統合しないと全体像は考えられない。

言い換えると、スケジュール通りにやることが、プロジェクトの成果としてどのような意味があるのか、顧客のニーズにどのような貢献をするのかといったことがはっきりしないため、「要するに何なのか」がはっきりしないのだ。これでは、対応してもらえないだろう。

プロジェクトの成果という視点からは、プロジェクトへの要求の本質は何で、それはどのような目的に対応するものかだ。ところが、目的を「○○という成果物を作る」といった羅列をしているだけなので、成果物の変更をせざるを得なくなったときに対応できない。したがって、追加要員を欲しいという提案しかできない。

顧客ニーズについても同じだ。顧客の目的を明確に把握しておらず、顧客ニーズの個々の要素は分かっていても、全体像が分からない。なので、顧客が仕様を変更してほしいといえば、予算とか工期以外に議論する方法がない。


◆結局、コンセプチュアルスキルの問題

この問題はコンセプチュアルスキルの問題である。コンセプチュアルスキルのもっとも基本になるのは

「組織の諸機能がいかに相互に依存しあっているか、また、その内のどれか1つが変化したとき、どのように全体に影響が及ぶかを認識すること」

ということだ。プロジェクトでいえば、そのプロジェクトの成果物や活動が組織(や顧客の組織)にどのような影響を与えるかを把握し、それに応じた対応ができることだ。


◆部分が全体にどういう影響を及ぼすかを考える

たとえば、上司に要員の追加を頼んでまで、やらなくてはならないことかどうかを判断できることだ。もし、そうだとすれば、

「このプロジェクトの成果は組織に対してどういう影響があり、それは不可欠である。
したがって、組織で要員が足らないことは分かっているが、それでも組織として対応すべきである」

という全体像を見据えた視点から提案をすればよい。

少なくとも、「プロジェクトで計画している成果物を完成させるために要員を追加してほしい」というよりははるかに、提案が通る可能性が高まるだろう。


◆大局観を持てるか

コンセプチュアルスキルはしばしば、抽象化能力と同一視されるが、実はコンセプチュアルスキルが弱いのは、全体像を捉えることができない問題によることが多い。

たとえば問題に遭遇した際に、何が起こっているかというのは明確に分析できるが、全体としてどのように捉えることができるのか、結局何なのかをうまく考えられない人が少なくない。

これは単に起こっている事象を抽象化できればよいという問題ではなく、抽象化し、本質を見極め、本質に問題を統合することが不可欠だ。PMstyleのコンセプチュアル思考モデルでは、このような思考を大局/分析という軸で考えているが、一般的にいえば大局観があるかどうかだ。

この問題は上位者や顧客など、全体を管理する人には不可欠だし、逆にそのような人たちに提案する人にも必要なスキルだといえる。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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