◆立場に関わるもの〜組織に対する帰属意識
前回は、立場に関するカレンシーで、公正なスタンスをとることまで述べた。このカレンシーについては、もうひとつ重要なものがある。それは、組織に対する帰属意識で共感することである。
前回述べたように、組織の中で、経営側の立場とプロジェクト側の立場には利害関係が生じることがあり、PMOはその点に対して、フェアなスタンスをとる必要がある。しかし、そのようなスタンスをとることも含めて、大きくいえば、同じ立場であることを示していくことが必要だ。
つまり、利害関係の対立があったとしても、顧客に対する利害関係を中心に据えることにより、利害関係を一致させるのだ。たとえば、プロジェクトのスケジュール遅延があり、リソースコンフリクトが起こり、組織とプロジェクトで利害が対立した。そこで、顧客に対する利害を考えてみる。プロジェクトが遅延することは顧客からみればどちらの責任かではなく、このましくないことだ。
すると、リソースをどうするかという接点で対立していたのが、スケジュールを遅らせないためにお互いにできることは何かという接点で協力することになる。このように、帰属意識をカレンシーとして使うことにより、Win−Winの関係を構築することができる可能性がある。
◆人間関係に関するカレンシー〜理解
2007年12月17日のコラムで、PMOとしてプロジェクトマネジャーを理解しているかという記事を書いたが、理解することは、重要なカレンシーになる。人間だれしも、自分を理解してくれる人に対しては、心を開くものだ。まず、理解することが必要だ。
プロジェクトマネジャーを理解するとはどういうことかについては、12月17日のコラムを読みなおして戴きたい。
◆人間関係に関するカレンシー〜受容
人間関係に関するカレンシーの2番目は受容である。これは意外と難しい。たとえば、開発体制をめぐり顧客との調整が難航し、計画書の作成が遅れているとしよう。これに対して、どういう態度をとるか。
(対応1)
仕方ないよね、じゃあ、計画書はあとで対応ということにして、レビューはブリーフィングで口頭でできるように調整しておくよ
(対応2)
提案書にはちゃんと書いていたのに災難だったね。とりあえず、規則どおりに計画レビューをすると間に合わないと思うので、日程を延期するように調整してみるよ
(対応3)
計画レビューは来週中に開催しなくてはならないけど、厳しいね。そっちでポイントを決めてくれれば、計画書作成作業はこっちでできるような手配をしておくよ。
この例では、受容とは(3)である。(1)や(2)は当たり障りないように、問題を先送りしているだけで、結局、どこかで計画書を作る工数が発生したり、スケジュール遅延の対応が発生するが、それを受け入れようとはしていない。
受け入れるということは、共同で問題解決をすることである。標準化の普及の問題で悩んでいるようなPMOは特にこのカレンシーを真剣に考えてみるとよいだろう。
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好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。
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