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第35回 手法からビジネスプロセスへ(2009.10.26)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆リーマンショックでプロジェクトマネジメントは変わったか

前回まで、プロジェクトマネジメントの標準を策定し、それを複数プロジェクトのマネジメントに拡張していき、プロジェクトROIの最適化を図るというところまで終わった。残る問題は変化に如何に対応していうかである。

リーマンショックから1年になる。この間、いろいろな業界のPMOの人と意見交換をする際に、必ず、プロジェクトマネジメントの方法を変えたかどうかを聞くようにしていた。IT企業では、特に変えていないという企業が80%、残りの20%の8割は、受注審査の基準値を甘くしたとか、ガバナンスの例外を認めるようにしたなど、収益を落とす方向に舵をきった。残りの2割が、異常報告の基準値を厳しくした、レポートラインを上げたなどで、トラブルの早期発見をし、ロスを小さくするようにしたという。メーカでは30%の企業が変えたといい、その内容は承認するROIを厳しくした、プロジェクトの実施承認の基準を厳しくしたという。また、IT企業と同じように、異常報告の基準値を厳しくしたというところもあった。

母数は20社程度なので、数字自体の意味はあまりないかもしれないが、それにしても、IT企業で80%、メーカで70%の企業は何もしていない。

ちなみに、聞いた中でほとんどの企業は定期的にプロセスやメトリクスの見直しはしているといい、その根拠はプロジェクトマネジャーの意見やPMOの評価結果だという。

あなたは、この結果をどのように感じるだろうか?


◆プロジェクトマネジメントは環境に適応しなくてはならない

この連載でも議論しているが、プロジェクトの目的や目標は経営戦略を反映すべきである。しかし、プロジェクトだけでは不十分である。プロジェクトマネジメントの方針や標準は戦略の実行環境に適応していなくてはならない。

ちょっと話がそれるが、PMOが何のために存在するかを考えて見ると、初期の段階では、明らかにプロジェクトマネジメント手法の適用や、あるいは標準化である。そして、前回も述べたようにそのあとは、プログラムマネジメントやポートフォリオの導入というミッションが待っている。


◆手法からビジネスプロセスへ

では、それを終わったら次は何か?「business-driven」である。本来の意味での戦略ということでもいい。

要するに、単にPMBOK(R)のような手法を標準化するPMOではなく、ビジネスの状況、あるいは、戦略実行環境に合わせて、プロジェクトマネジメントのプロセスを決めていくという役割を担うべきである。

つまり、プロジェクトマネジメントとしても、単に手法を適用するということではなく、ビジネス(オペレーション)への応用をすることが求められる。おそらく、プロジェクトマネジメントが適用できる分野は、今、盛んに行われている製品やシステムの開発以外に、
・経営企画
・営業活動

などいくつかがあり得ると思うが、これらの分野では、製品開発のようにプロジェクトマネジメント手法を使って管理するという発想ではできない。おそらく、プロジェクトマネジメントプロセスをベースにした業務管理プロセスを作り上げていく必要がある。そこまでできて、初めて、環境に適応したと言えるが、これは標準のようにスタティックなものではなく、動的なものが必要である。つまり、改善というよりは、適応が必要なのだ。

そのような動的な適用ができるのが最後のレベルだといえよう。


◆プロセス管理が先行している分野

このような議論は、システム開発や商品開発のように、すでにビジネスプロセス管理がある程度、形式化されている分野では多少、違和感がある議論かもしれない。ただし、これらの分野にプロジェクトマネジメントを導入した事例をみていると、品質に呪縛されている。つまり、管理の視点が品質であり、プロジェクトになっていないケースが驚くほど多い。

その典型が、品質シンドロームとでも言いたくなるような、「品質絶対主義」である。別の分野で同質の問題に、「顧客絶対主義」というのがある。「品質が・・・」、「お客様が・・・」というと聞こえはいいが、要するに思考停止しているだけに過ぎない。

この思考停止から脱出するには、「視座」をマネジメントに切り替え、 ビジネスプロセス一から構築し直す必要があるのではないかと思う。中途半端に増築しても、せいぜい、リスクマネジメントが定着するくらいで、なかなか、変わらないものだ。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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