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第30回 アクティブ・ノンアクションと成熟度 (2009.09.08)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆不毛な忙しさ

プロジェクトの成熟度を考える上で、どうしても見逃せない問題がある。

プロジェクトマネジメントを導入した組織で、マネジャー(課長)やシニアマネジャー(部長)が忙しくて、そんなやり方はできないという問題である。

前々回、前回と述べてきた計画によるガバナンスの仕組みをとってみても、マネジャーやシニアマネジャーがプロジェクトスポンサーとして機能しない限り、仕組みは十分に機能することはなく、無理に機能させると、今度はプロジェクトマネジャーにより負荷がかかり、肝心のプロジェクトマネジメントが十分にできないという悪循環が生じる。

確かに、プロジェクトを管理する立場にあるマネジャーやシニアマネジャーは忙しい。ここで一つ考えたいことは、「アクティブ・ノンアクション」という現象に陥っていないかということだ。アクティブ・ノンアクションは日本語では行動的な不行動とか、不毛な忙しさと訳され、

スマントラ・ゴシャール先生が『意志力革命』

で指摘した現象で、多忙ではあるが目的を伴う意識的行動をとっていないことを言っている。


◆アクティブ・ノンアクションは伝染する

目的意識を持って行動をしていないと、いくら忙しくしていても、成果を上げることはできないことにとどまらず、成果を上げることができないので、ますます忙しくなるという悪循環が起こる。このタイプの忙しさに陥っているマネジャーが異常に増えてきている。

さらには、上に述べたように、マネジャーのアクティブ・ノンアクション問題が、プロジェクトマネジャーのアクティブ・ノンアクション問題を引き起こすという伝染も発生している。


◆なぜ、プロジェクト制度がアクティブ・ノンアクションを引き起こすのか

問題は、なぜ、プロジェクトマネジメントを導入すると、マネジャーがアクティブ・ノンアクションに陥るかである。キーワードは目的意識である。プロジェクト制を採用するときに、もっとも重要なことは、プロジェクトスポンサーの立場にあるマネジャーやシニアマネジャーが、経営の要求をきちんとくみ上げて、プロジェクトの目的をきちんと整理してプロジェクトマネジャーに渡すことである。

マネジャーは経営側と現場のブリッジの立場であるので、成果を出そうとすれば、プロジェクトに自分の目的を託し、それをプロジェクトマネジャーに任せる必要がある。ところが、肝心の目的の設定ができていない。

つまり、目的意識を持たずに、予算だけに追い回されて、プロジェクトを少しでも多く実施することに専念する。一見、合理性があるのだが、これをやっていると、プロジェクトマネジャーにプロジェクトに問題が発生したときに適切な判断ができない。そこで、プロジェクトのフォローを行う羽目になる。いわゆるトラブル対応である。トラブル対応が忙しくて、目的をちゃんと考えて、プロジェクトを立ち上げることなど、とうていできずに、案件が上がってきたら、プロジェクトマネジャーを決めて丸投げということになる。


◆アクティブ・ノンアクションを成熟スパイラルに変えるには

この悪循環を断ち切るには、目的意識と集中により行動を沸き上がらせ、成果に結びつけていくことが不可欠であるというのが、スマントラ・ゴシャール先生の主張である。

これはプロジェクトマネジメントの枠組みでいえば、プロジェクトデザインである。つまり、マネジャー自身の目的意識に支えられたプロジェクトをデザインし、それをプロジェクトマネジャーに渡していくことだ。そうすることによって、プロジェクトマネジャーは自立的にプロジェクトの目的を達成することが可能になり、それは、マネジャーの目的意識にかなった成果をもたらすことになる。

この状況を複数のプロジェクトに対して、作っていくことにより、マネジャーは忙しいが、成果を得ることができ、そしてプロジェクトマネジャーが行うプロジェクトマネジメントにうまく整合したマネジメント活動を行うことができる。

アクティブノンアクションという悪循環から、このような好循環を作ること、つまり、プロジェクトデザインを行うことが、成熟度を向上させる前提となるだろう。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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