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第25回 なぜ、プロジェクトスポンサーなのか(2009.08.03)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆「プロジェクトマネジメントチームが必要とする専門領域」

前回の記事に対して、表題のような意見をいただいた。言っていることは分かるが、それをすべて権限委譲しているのではないかという意見だ。権限委譲してできるのであれば、それはそのとおりなので、議論の余地はない。

PMBOK(R)にプロジェクトマネジメントが効果を発揮するために

「プロジェクトマネジメントチームが必要とする専門領域」

という図がある。そして、

(1)プロジェクトマネジメント知識体系
(2)適用分野の知識・標準・規制
(3)プロジェクト環境の理解
(4)一般的なマネジメントの知識・スキル
(5)人間関係のスキル

の5つだと書かれている。

何よりも重要なことは、プロジェクトマネジャーが必要とするではなく、「プロジェクトマネジメントチーム」が必要とするという表現である。PMBOK(R)では、プロジェクトマネジメントチームにはプロジェクトスポンサーが含まれている。前回説明したプロジェクトスポンサーの仕事は、主に、(3)、(4)の範疇のものである。

と言ってしまっては身も蓋もないので、もう少し、説明する。


◆PMOブームはなぜ、起こったのか

PMBOK(R)の考え方は(1)のプロジェクトマネジメント知識体系の一部がPMBOK(R)として定義されており、(2)〜(5)についても「最小限」の知識やスキルが含まれている。そして、不足している部分はプロジェクトマネジメントチームでカバーしていくというのが基本である。

しかし、現実には、多くのプロジェクトマネジャーが「実践的なレベル」で持っているマネジメントの知識やスキルは、(2)の一部である業務マネジメントのスキルだけであることが多い。

(1)は一応、勉強してはいるが実践的とは言い難いケースが多い。これは、日本の特徴であり、これをカバーするためにPMOの設立ブームが起こった。米国では、プロジェクトマネジメントブームが一段落して、しばらくしてPMOブームが起こったのと比べると、そういう事情があると思われる。これに対して、日本の企業の多くはPMBOK(R)的なプロジェクトマネジメントを展開するためにPMOを作り、プロジェクトマネジャーは業務マネジメントとしてプロジェクトマネジメントを行っているケースが多い。そして、PMOがあまりPMBOK(R)に詳しくないプロジェクトマネジャーの活動をPMBOK(R)的な視点からカバーしているケースが多い。


◆同じ構図で「プロジェクトスポンサー」ブームが起こる

同じことが、「一般的マネジメント」に関しても起こっている。

・プロジェクトの目的が設定できないプロジェクトマネジャー
・作業計画は作れるが、基本計画のできないプロジェクトマネジャー
・評価や判断はできるが、意志決定ができないプロジェクトマネジャー

といった、「えっ」と思うようなプロジェクトマネジャーがたくさんいる。

これは無理からぬ一面がある。プロジェクトマネジャーの年齢は組織によって違う。職位でいえば、係長〜部長の間にいる人がプロジェクトマネジャーを務めることが多い。

おそらく、PMBOK(R)が求めているプロジェクトマネジメントチームに対する専門知識をすべて持っていると言えるのはかろうじて部長クラスだ。係長クラスのプロジェクトマネジャーはプロジェクトマネジメントに対するなにがしかの知識と、業務知識だけしか持ち合わせないケースが多い。最近ではこれに人間関係のスキル開発に力を入れている組織が増え、加えて人間関係のスキルを持っている場合もある。


◆ヒューマンスキルより、一般的マネジメントスキルの方が重要

実はもっとも重要なのは、人間関係のスキルではなく、一般的マネジメントのスキルである。たとえば、計画を作るスキル。プロジェクト計画を作っていると言うが、計画スキルがほとんどなく、業務経験を使った見積もりやリスク計画だけしか出来ないプロジェクトマネジャーは驚くくらい多い。たとえば、見積もりが正確だとしたときに、どのような計画を作ればよいかを全く理解していない。そして、不十分な計画を棚に上げて、ヒューマンスキルで乗り切ろうとする。こんな本末転倒があちこちでおこっている。

構想や意志決定もしかりである。


これらはマネジメントの基礎力であり、もし、権限委譲するプロジェクトマネジャーにもしそのような基礎力がなければプロジェクトマネジメントはできない。また、プロジェクトマネジメント知識のようにPMOがカバーすることも現実的ではない。

このような基礎力ですら、持ち合わせているのは課長クラスではないかと思う。ましてや、ファイナンスなどのマネジメントの専門的知識になってくると、課長でも怪しいことは上に述べた通りだ。そのように考えるとプロジェクトマネジメントをすべてプロジェクトマネジャーにやらせるのは「無理」というもので、むしろ、プロジェクトマネジャーを育てるより、フォーメーションを真剣に考える方が得策だともいえる。これが、プロジェクトスポンサー必要論である。

ただし、ここで、マネジメント基礎力を持つプロジェクトマネジャーを育てるという手はあり得る。いずれにしても、課長、部長とマネジメント業務の難易度が上がっていく中でマネジメントスキルは身につけていく必要があるので、それを前倒しにするだけだ。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「プロジェクトマネジャー養成マガジン」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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