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No28. パートナーとの契約交渉のポイント《PMstyle》(2015.08.11)

プロジェクトマネジメントオフィス 鈴木道代


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【目的】パートナーとのより良い協定を得る

【用途】調達計画後の調達実行時に、パートナーとの契約を締結する

【効用】明確なコミットメントを文書にて、受けることができる

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◆パートナーとの契約交渉

プロジェクト調達マネジメントは、PMBOK(R)第5版では以下のプロセスがあります。

・調達計画:
  WBS項目に対して内外製分析を行い、外製する作業範囲(SOW)を決める
  RFIやRFPなどの調達文書を作成し、発注先選定基準を決める
 ※内外製分析については、こちらのコラムをご覧ください

・調達実行:
  入札を行い、作成した独自見積りと発注先選定基準から調達先を決める
  調達先と交渉を行い、合意書を作成する

・調達コントロール
  調達先との関係をマネジメントし、パフォーマンスをモニタリングする
  調達先の作業プロセスの検証、成果物の検証を行う

・調達終結
  調達先の評価を行い、請求書の受入などで調達を完了する

本号では、調達先(パートナー)が決定し、合意書を作成するまでに行う交渉のポイントについて取り上げます。

調達先が決まれば、正式に発注するために、いろいろな条件についての合意を得る必要があります。提案依頼書(RFP:Request for Proposal)、調達作業範囲記述書(SOW:Statement of Work)などで、提示されているものもありますが、

・パフォーマンス報告
・実施期間
・価格
・支払条件
・ペナルティ
・インセンティブ
・再委託

などの条件などについて、最終合意を得て、契約書や合意書などを締結し、正式発注を行います。そして、これらの交渉では、よりよい調達物の獲得のために、パートナーとの信頼関係を構築し、そして、満足できる条件を得ることが目的です。

交渉には、大きく分けて、分配型交渉と統合型交渉があり、前者は基本的に意思決定の問題で、価値の配分を行います。後者は、WinWinを実現するための問題解決であり、価値の創造を目指します。

調達先との契約のための交渉は、分配型交渉であり、お互いに自分の成果が最大になるようにと考え、交渉に臨んでいます。ただし、力関係という純然たるものがありますので、自分よりも相手先の成果を考えないといけない場合もあります。

そのため、力が強い場合は、自分の成果だけを優先し、支配的な交渉を行い、弱い場合は、相手の成果を優先的に考えざるをおえず、相手の要求を恩恵的に受け入れるような交渉をしてしまいます。

しかし、調達においては、価値を提供し、それによって、金銭を得ていますので、全く対等の立場であるはずです。必要な場合は、譲歩し、また、反対に、強く要求するところでは、強く要求することで、お互いに納得のいくところに落ち着くために交渉を行っています。

そのお互いに納得のいくところというのは、相手が大事だと思っているところには、譲歩し、また、譲歩したことで恩恵的な関係を作り、自分が大事だと思っているところで、強く要求し、相手から譲歩してもらうということです。

ただし、相手がその点には、あまりこだわっていない、というところがポイントであり、交渉のうえでは、自分にとっての重要さの理由や背景などを知らさないように心がけます。相手に知られてしまうと、譲歩を引き出すことが難しくなります。

例えば、相手が2週間ごとの進捗報告を重要視し、こちらが支払条件を重要視している場合には、進捗報告について、本当はそんなに大変ではないのだけど、どれだけ大変か、という理由を協調することで、支払い条件についての譲歩を得ることができるわけです。

そのためには、交渉の前に、必要な条件について、以下の値を決めておき、どのような順番で条件の交渉をするのかなどの戦略を決め、交渉に臨みます。

・自分の抵抗点:最低限の値(ここまでなら出せる値、隠しておく)であり、これより下回る場合は交渉を打ち切る
・相手の目標点:相手にとって最高の値(不明、予測しておく)
・自分の言い値:交渉で切り出す値
・相手の抵抗点:相手にとって最低限の値(不明、予測しておく)であり、これを下回る場合には交渉を打ち切ることが予想される
・自分の目標点:自分にとって最高の値(もっとも安値、隠しておく)

交渉は、自分の抵抗点と相手の抵抗点の間で行われます。どちらかの抵抗点を超えてしまうと、交渉は決裂です。
そのため、相手の抵抗点を知ることが重要であり、予測した値が正しいかどうかを判断するために、いろいろな情報を引き出すことや、他の条件を追加することで、相手の抵抗点を下げることを考えます。

もちろん、相手も同じことを考えて交渉しているはずですので、交渉の前には、相手の目標点、抵抗点を予測し、そして、自分の目標点、抵抗点を決めておくだけではなく、代替案(このような条件があれば、呑み込める値)についても決めておくことがポイントです。

そして、条件が決まれば、文書にて合意することで、パートナーのコミットメントを引き出し、最後に交渉とそのコミットメントに対し、感謝を示し、交渉を終え、調達コントロールプロセスに進みます。


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著者紹介

鈴木道代、PMP、PMS
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス、PMstyleプランナー
神戸大学工学部卒業後、アパレル企業の情報システム部に所属し、データベース管理者、システムエンジニア、リーダーとして社内システムの開発・マネジメントに携わる。
その後、独立し、小規模のシステム開発プロジェクトを受託し、プロジェクトマネジメントや開発マネジメントを担当する。
2004年、PMPを取得し、株式会社プロジェクトマネジメントオフィスにて、プロジェクトマネジメントのコンサルティング、研修講師、セミナー講師を担当する。2010年、PMS取得。

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