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第88回 保守主義を打ち破る(2016.01.19)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆アルボムッレ・スマナサーラさんの指摘

先日、スリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)長老であるアルボムッレ・スマナサーラさんの「「忙しい」を捨てる 時間にとらわれない生き方」という本を読んでいたら、次のような趣旨の記述があり、なるほどと思った。

技術の分野は日進月歩なので、保守的ではなく、革新的でなくてはならない。日本人は本来手先が器用で、技術立国として確固たる地位を築いてきたが、今は、韓国や中国に負けている分野が目につく。これは日本人が「現状維持」を望む「保守主義者」になっているからだ。

さらに、日本人は長時間労働をしていることに触れ、その原因として

日本社会は保守主義的で自分の頭を使って創造的にアイデアを生み出そうとする人たちを抑圧するので、本来の生産性とは関係なく、長時間労働になってしまう

と指摘する。


◆「保守主義」という本質的な指摘

日本企業がイノベーションを起こしにくい理由に関しては、よく言われる「失敗を許さない」をはじめとしていろいろな指摘があるが、この指摘は見たことがなかったし、非常に重要なポイントだと思った次第だ。

実際に、イノベーションの必要性の議論になると、出てくる反応としてはイノベーションがどうだというより、変えたくないという反応が圧倒的に多い。たとえば、新製品開発にしても、できるだけ類似の製品で、見せ方を変えるという方針で作られるものが圧倒的に多い。やはり現状維持なのだ。

このような文脈で考えると、失敗を許さないという点を議論するというのはちょっと違うように思えてくる。失敗を許さないという姿勢は、現状維持をしたいがための言い分であって、本当に失敗をしてはならないと考えているわけではないように思う。もちろん、失敗してよいと思っているわけではないが、失敗をしてよいかどうかを議論したいわけでもなく、失敗が問題になるような場を作りたくないのだ。

そう考えると、今、すべきことは失敗を認めることではなく、現状維持をしたいというマインドを、常に変わらなくてはならないというマインドに変えることである。言い換えるとイノベーティブになることである。

特に、日常的な活動の中でイノベーティブになることが重要だ。


◆イノベーションにはマインドだけではなく、手法が必要

というと、変革プログラムに取り組んでいるという組織も少なくないだろう。実際に企業変革がうまく行っている組織もあるように思う。

ただし、どんどんイノベーションを生み出している企業は本当の一部だ。変革に成功している多くの会社は、できることを変えるという考え方で取り組んでいる。

イノベーションにはマインドに加えて方法論が必要である。変わるマインドに変えることはイノベーションを起こす必要条件であって必要十分条件ではない。この2層を明確にして、それぞれをクリアして初めて持続的にイノベーションを生み出す組織になる。

この両方を実現するためには、プロジェクト制度をうまく取り入れるのが手っ取り早い。どのようなプロジェクト制度を入れればよいかを「イノベーションのためのプログラム&プロジェクトマネジメント」で考えてみたい。


◆参考資料
アルボムッレ・スマナサーラ「「忙しい」を捨てる 時間にとらわれない生き方 (角川新書)」、KADOKAWA/角川書店(2016)


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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