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第83回 Whyから始めるイノベーション(2015.08.19)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆Whatから始めるプロジェクト

製品を開発するときには、Whatから始めることが多い。プロジェクトマネジメントの考え方でも、まずはWhat、そこにHow、How muchなどいろいろな条件を決めてプロジェクトを進めていくことになっている。また、背景情報としてWhyも考えておく。

しかしイノベーションではこの図式はとらない方がいい。特に、大きなイノベーションを起こしたい場合はそうだ。何から決めるかというとWhyである。

◆Whyから始める

WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う」を書いたサイモン・シネック氏は、アップルが図抜けた成功をしている理由を以下のように語っている。

「私達は素晴らしいコンピューターをつくっています。ファッショナブルなデザイン、操作はシンプルでユーザーフレンドリー。どうですか?」

これでは、誰も買おうとは思わない。アップルは

「私達は世界を変えられると信じています。そして常に既存の考え方とは違う考え方をします。世界を変えるために美しいデザインかつ機能性に優れた製品を世に送り出そうと努力するうちに、このような製品ができあがりました。おひとついかがでしょうか?」

のように語っている。つまり、「世界を変えるため」というWhyから始めている。これだと人々は購買意欲を触発される。

この指摘はイノベーションの方法に対しても重要な示唆を含んでいる。


◆ゴールの見えないイノベーションはWhyから始める

インクリメンタルイノベーションであれば、Whatから始めることができるだろう。顧客が何を欲しがっているかも見えているし、何を実現できれば成功するか見えているからだ。あとは、Whatを明確にして、Howを考えるだけだ。Whyは背景に過ぎない。

ところが、ゴールの見えない破壊的なイノベーションを起こすには何をすればいいのかよく見えない。というか、そもそもそういう発想ではなく、何をしたいかからすべては始まる。言い換えるとビジョンから始まる。


◆Why→How→Whatの順に考える

Whyにより自分たちのビジョンが明確になる。アップルの例であれば、「世界を変える」というように極めて抽象度の高いものだ。

そして、次に考えるのはHowである。ただしここでいうはHowはWhatに対するHowではなく、Whyに対するHowである。アップルの例だと「世界を変える」にはどうすればよいかだ。それが決まって初めてWhatが出てくる。


◆Whatがあたえられた場合どうするか


多くのプロジェクトでは顧客や上位組織からWhatがあたえられるが、その場合はどうすればいいのだろう?

このような場合、もう一度、Whyを考えてみる。そこでWhyが考えられないようなら、Whatの根拠がないということだからそのプロジェクトは止めた方がよい。

Whyを繰り返し、ビジョンが見えたら、Whatをビジョンに対するWhatとして再定義し、そこからプロジェクトのWhatに展開していく。

たとえば、「タッチパネルで操作できるimode携帯電話」を作るというプロジェクトがあったとする。これはWhatだ。そこで、なぜかを考えてみる。

キーボードを使わなくて使える携帯電話が欲しい
→多くの人が簡単に使える携帯電話が欲しい
→そのような携帯電話で生活様式を変えることができる
→みんなの生活様式が変われば世の中を変えることができる

といった思考プロセスで、「世界を変える」というビジョンにたどりついたわけだ。ここまでたどり着けば、どうやって世界を変えるかと考える。「日常生活のメタファだけで操作することによって、バーチャルとリアルの境界を曖昧し、生活を拡張する」といったHowが生まれる。そして、最後にWhatでは、スマートフォンとなるわけだ。

このように、自発の製品開発だけではなく、受託型の製品開発においても、Whyから考えることによってイノベーションを生み出すことができる。


【参考資料】

サイモン・シネック(栗木 さつき訳)
WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う」、日本経済新聞出版社(2012)


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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