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第67回 失敗を許容することは正しいのか(2015.01.07)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人

◆収益確保のためには失敗は許容できない

イノベーションを推進する、イノベーティブな組織を作るといったときに、必ず出てくるのが、

・リスクを取れるようにすること
・失敗を許容すること

である。今回の戦略ノートはこの問題について考えてみる。

ちょっと大上段な話になるが、この問題の本質は何のために経営戦略を作るのかという話にさかのぼる。ざっくりといえば、堅実な経営計画がありそれを実行するための戦略なのか、それとも経営ビジョンに基づく成長目標がありそれを実現することまで含めた戦略なのかによって変わってくる。

前者の場合、大前提として計画通りの収益確保があるので、そこにおいて失敗してもいいというのは考えにくい方針だし、リスクを取ることも望ましいとはいえない。実際に現場のマネジャーの意見を聞いても失敗を許容することは自部門の方針になじまないという人が多い。

日本の場合、ミドルアップダウンで戦略策定をしているケースが多いので、後者はあまり多くないが、後者の場合、成長のための模索があり、ある程度失敗は仕方ない部分があると考えられなくはないし、リスクを取ることは不可欠だともいえる。


◆イノベーションの種類

前者と後者ではイノベーションの種類も異なる。前者で求めらるのはインクリメンタルイノベーションで、製品やサービスに新しい要素を入れることによって売り上げや利益を維持したり、あるいはプロセスを工夫することによって収益率を維持するようなイノベーションが必要になるが、これはある程度見通しが立つ活動である。

これに対して後者では、ラディカルイノベーションで、売り上げを拡大することが求められる。こちらはうまくいくかどうか分からない。そこでリスクを取って失敗を許容しないとできないという話になる。

まず、この区別が明確にできていないケースがある。インクリメンタルイノベーションで失敗をしてもいいという議論は成り立たない。問題はラディカルイノベーションである。

ラディカルイノベーションがうまく行かないのは失敗なのかというところに議論の本質がある。たとえば、リーン開発やリーンスタートアップでは、仮説を立てて、その仮説に対する知見が得られれば一歩前進したと考える。つまり、如何に仮説検証を合理的に行うかがパフォーマンスに関わってくる。


◆失敗ではなく、学習

これは見方を変えると、学習をしているわけで、失敗をしているわけではない。

たとえば製品のマイナーチェンジと全くの新製品を開発するときには、開発プロセスも違うし、成功基準も違う。前者の場合、具体的なオペレーションに近い計画があり、販売も含めて計画通りに進めることが成功である。

後者の場合には、制約と目標があり、制約の中で目標をクリアできれば成功である。制約の中で、いろいろと試行錯誤をし、目標に近づいていく。うまく行くかどうかは、どのような仮説を立てることができるかと、どのように学習できるかで決まる。

失敗を許容すべきかどうかの問題が混乱しているのは、この2つのある意味で全く性格の違う活動を同一のスキームで扱おうとしていることにある。もちろん、制約と目標があって制約の中で目標を達成するというスキームは同じだ。だが、そのスキームの実現方法としてプロセスを準備するなら異なるプロセスでなくてはならない。


◆プロセスかプロジェクトか

前者は業務プロセスでいいが、後者はプロジェクトでなくてはうまく行かない。仮説や仮説検証のプロセスは標準化できるものではないからだ。そしてプロジェクトである限り、制約の中で目標を達成すれば成功である。

ところが、現実にはプロジェクトの遂行においても同じ問題が起こっている。つまり、プロジェクトの遂行プロセスを詳細な計画承認(ベースライン)でがんじがらめにして、仮説検証ができないような環境を作っている。このため、イノベーションでいえばインクリメンタルイノベーションしかできないような状況になっている組織が多い。

なぜプロジェクトとして業務を行っているのかをもう一度考え直す必要がある。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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