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マーケットインとビジネスプロセスイノベーションからマーケットアウトとコンセプトイノベーションや技術イノベーションへとビジネスモデルをイノベーションする

第10回 ビジネスモデルとイノベーション(2013.06.04)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆プロダクトアウトと技術イノベーション

今回から、イノベーションの対象について考えてみたい。

イノベーションというと多くの人が技術(テクノロジー)の革新を思い浮かべる。技術のイノベーションは、研究開発活動によって新しい技術を開発する。そして、その技術を使って実現できることを見つけ出し、それを商品化するという流れで行われる。

この背景には、自社でできる商品を開発して、市場に出していくという企業のあり方がある。いわゆるプロダクトアウトである。プロダクトアウトの勝敗はどれだけ機能、性能的に優れた商品を作れるかにかかっているが、それは企業の技術力に依存する。したがって、技術の研究開発によって企業の技術力を向上させていくことが市場での勝利に直結している。いわゆる技術開発競争である。


◆マーケットインとビジネスプロセスイノベーション

ところが、だんだんこの方法は通じなくなってきた。

ものがだんだん、いきわたるようになり、市場が良いものを買うという性質から、欲しいものを買う(欲しいものしか買わない)という性質に変わってきたことが大きい。当然ながら、ビジネスモデルも変わってくる。プロダクトアウトのビジネスモデルから、マーケットインというビジネスモデルに変わってきた。このこと自体がビジネスモデルのイノベーションであるが、その点についてはまた後程述べる。

マーケットインのビジネスモデルを取るようになると、研究開発の機能は、研究と開発に分かれるようになった。研究は基礎研究として、市場のニーズに関係なく、企業としての将来像に基づいて必要な技術を時間をかけて開発する。一方で、マーケットイン、つまり市場ニーズを取り込み、実現しようとすると、必要だが持っていない技術が出てくる。持っていない技術は開発するか、買うしかない。いずれにしても技術を獲得するためのイノベーションが必要になる。

これは技術イノベーションを行うと同時にマーケットインというビジネスモデルのイノベーションによって、市場に出す商品を決め、その商品を実現するために必要な技術を開発し、商品を実現するというビジネスプロセスのイノベーションも併せて行っている点に注目して欲しい。

このように、技術だけはなく、ビジネスも視野に入れて新しい価値創造をしていかなくてはイノベーションは成り立りにくくなっている。従来のようなやり方ではあまりにも価値生産性が低いからだ。


◆マーケットアウトとコンセプトイノベーション

ただし、現在イノベーティブだと考えられている企業はここからもう一歩進んでいる企業がすくなくない。それは、市場ニーズを取り込むのではなく、自分たちが市場に出したいものを明確に定義し、それを実現するために研究開発を行う。その上で、商品として完成させ、新しい市場を創っていくという活動である。この代表がアップルであり、iPhoneである。

この背景にもビジネスモデルのイノベーションがある。つまり、従来、マーケットインで顧客の声を取り込んで実現した商品を市場に出していたビジネスモデルから、自分たちの考える市場そのものを作ってしまうというマーケットアウトと呼ばれるビジネスモデルに変わっている。

このイノベーションでは、新しい市場を作るためにコンセプトが非常に重要になってくる。つまり、前回述べたようなコンセプトのイノベーションを行うと同時に、技術イノベーションも行う。

ただ、アップルが既存の技術を組み合わせて画期的な商品を開発しているとよく言われるように、このタイプのイノベーションでは、要素技術よりシステム化技術のイノベーションの方が重要性が高くなる。つまり、今までなかった要素技術の組み合わせによって新しい価値を生み出すイノベーションである。iPhoneはまさにそのような商品である。


◆ビジネスモデルイノベーション

さて、以上のようにビジネスモデルをイノベーションすることにより、それに併せた技術や製品のイノベーションを繰り返してきたわけだが、マーケットアウトのビジネスモデルにおいては、コンセプトを革新するので、製品だけでなく、その製品のビジネスモデルにもイノベーションを起こしていることが多い。

ここでビジネスモデルという言葉を定義しておく。

ビジネスモデルとは企業が顧客に対して価値を製造、販売、提供する過程を示すもの
である。極論すれば、マーケットアウトというのはビジネスモデルのイノベーションそのものであると言ってもよいだろう。

ビジネスモデルのイノベーションとしてもiPhoneが代表的である。iPhone以前の携帯電話は、クローズなものであった。携帯で使えるアプリケーションは初期に組み込まれているものと、キャリアが提供しているものだけだった。ところが、iPhoneはアプリケーションをオープンにし、誰もが開発でき、販売できるようにするというビジネスモデルイノベーションを起こした。これをジョブズは電話を再発明したといったわけだ。

このコンセプト自体は別に新しいものではなくPCで普通に行われているものだが、携帯をそのようにプラットホーム化したのは革新的だった。そして、これによって携帯電話でできることは大きく変わり、スマートフォンという名の機器にふさわしい商品に生まれ変わり、後のタブレットとともにPCの需要を奪っていく大きなイノベーションになった。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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