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第28話 イノベーションリーダーのコンセプチュアルスキル(1)〜iPhone開発にみる5つの軸の必要性(2014.07.09)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆はじめに

イノベーションリーダーの質問力のシリーズが途中で止まってしまっているが、このような質問を生み出すときに欠かせないのがコンセプチュアルスキルである。

そこで並行してコンセプチュアルスキルについて考えてみたい。一部の議論はイノベーティブリーダーの思考法の中でしているが、改めて別の枠組みで考えてみる。
第14話で、

【イノベーション・リーダーシップ】第14話 イノベーティブ・リーダーの思考法(6)〜抽象と具象の行き来


という記事を書いたが、この記事に拡張と深掘りだと考えて戴ければよい。

この記事では抽象と具象の行き来から、経験を新しい場面に活用するという趣旨であった。この場合のコンセプチュアルスキルは抽象と具象の行き来ということになる。

これも含めてコンセプチュアルスキルは以下の5つの要素について、両極を行き来するスキルである。

(1)抽象的/具象的
(2)主観的/客観的
(3)直観的/論理的
(4)大局的/分析的
(5)長期的/短期的

それぞれの軸の意味は以下の通りである。


◆5つの軸の意味

(1)抽象的/具象的
現実の現象を抽象化し、抽象的に思考(問題解決や意思決定)を行い、その結果を複数の具体的な事象や行動に落とし込むことにより、現象からは直接得にくい結論を得ることができる。

(2)主観的/客観的
自身の価値感に基づき思考を行い、その結果について第三者的な視点から妥当性を検証・調整する。この繰り返しにより、誰もが共感できる結論を得ることができる。

(3)直観的/論理的
直観的に判断をした結果に対して論理的根拠を構成し、論理で得られた結果の妥当性を直感的に判断する。この繰り返しにより、不確実性のある中で合理性のある結論を得ることができる。

(4)大局的/分析的
イメージで大雑把に物事を捉えた上で、そのイメージを定量的に説明することによりイメージを明確にする。これを繰り返しながら、イメージレベルの思考を行い、結論を出すことができる。

(5)長期的/短期的
長期スパンの思考と短期スパンの思考を相互に繰り返し、それぞれの結果を統合し、短長期のいずれにおいても最適な結論を得ることができる。


◆電話を抽象化し、必要な機能を組み合わせる

では、なぜ、この5つなのか。iPhoneを例にとって説明してみよう。

iPhoneが発表されるときにジョブズが宣言したのは電話を再発明したということだった。これはどういうことか。電話は声によるコミュニケーションのツールであり、加えて、携帯電話ではメールによるコミュニケーションのツールだった。

ジョブズが創ろうとしたものはこれらを超えるコミュニケーションのツールだった。このため、新しい電話の在り方を考えるのに、パーソナルコミュニケーションのルーツまで抽象化した。これがコンセプトになる。

そして、このコンセプトに必要な具体的な機能をいろいろと模索した。その結果、一つ一つの機能をみればiPhoneが最初というものはほとんどないがが、全体(機能の組み合わせ)としては画期的なものになった。


◆主観と直観で他社が追従できないデザインを生み出す

ここで注目されるのは発売後7年近く経っているのに未だに他社が追従できないようなデザイン、アプリケーションをすべて切り離したスタイルなどのiPhoneの画期的特徴がどうして生まれたかという点だ。

ジョブスものやアップルものをから分かる範囲だが、まず、デザインについては自分の主張を徹底的にエンジニアにぶつけている。エンジニアが作ったものに対して、自分で使ってみて、要求を突き付ける。この繰り返しだった。これは、ジョブズの主観による要求をエンジニアの客観的に評価し、それにジョブズがまた主観をぶつけることにより、主観と客観の行き来をしていると解釈できる。

この中でジョブズは直観的で欲しいものを考えており、エンジニアはそれを論理的に考え、合理性があるものを実現していった。これによりジョブズの直観をエンジニアが論理的に実現するということをしていたわけだ。


◆ジョブズのイメージを分析し、製品の方向性を決める

全体を通じて言えるは、ジョブズのイメージをエンジニアが分析し、製品の形を作っていたことだ。

つまり、パーソナルコミュニケーションのツールはどうあるべきだというイメージがあり、エンジニアがその実現方法を考えながら、イメージを徐々に明確にしていったものと思われる。ここでは大局と分析の行き来をしている。

その中で、上に述べたようなジョブズの要求や直観的な良し悪しを取り入れているのだ。


◆OSとアプリを分け、長期的な環境の進化を吸収する

さらに興味深いのは、なぜOSとアプリという形をとったかだ。そこには通信を始めとするいくつかのコア技術のロードマップがあったものと思われる。ジョブズの頭の中には全体のイメージ(ビジョン)があり、それを何世代かで実現するロードマップもあったのだろう。

その中で、では直近のバージョンで最高のものを提供しようとすると、OSのアップグレードはメーカーがコントロールすればよいが、アプリケーションは解放し、ベンダーが自由なタイミングで提供できるようにした方が合理的である。これがアプリケーションにした理由だと思われる。

つまり、短期的視点と長期的視点で考えて、両方で最高のものを提供する方法としてアプリという方法を選んだものと思われる。

同時にインタフェースなどのデザインを決め、全体のイメージをつくり、開発者と共有した上で、アプリを作らせるというところでも大局と分析の行き来をしているわけだ。

このようにジョブズは自身とエンジニアのチームをうまく使って、5つの軸の行き来を実行し、iPhoneという画期的なイノベーションを実現した。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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