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ビジョンの浸透は、共感する人が、だんだん、行動に移ってくることである

第4話 ストーリーのチカラ(2012.07.23)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆行動を伴う共感を得るには

前回は、リーダーの掲げるビジョンは、フォロワーが自分のものだと思ったときに初めて、ビジョンになったといえるという話をした。

では、どのようなときにフォロワーはリーダーの掲げるビジョンを自分のものだと思えるのだろうか?キーワードとして、しばしば、「共感」というキーワードが語られる。共感しなくてはならないことは確かなのだが、問題はそのあとの行動である。

・共感したから期待を込めて見守ろう
・共感したからチアガールになろう
・共感したから一緒に行動しよう

など、いくつかのレベルが考えられる。プロジェクトを進めていく上では、どれも重要なのだが、フォロワーが自分のものだと思うのは、行動するレベルだろう。もう少し正確にいえば、ビジョンの浸透というのは、共感する人が、だんだん、行動に移ってくることだといえる。


◆ストーリーを語る

ビジョンに行動を伴う共感を生み出すために重要な役割を果たすのは、「ストーリー」である。第2回で、ヤマハの光るギター「EZ-EG」の開発物語を紹介したが、この開発で多くの人を動かしたのは、旭保彦氏の語った

「昔、学生のころ、カッコつけたい、モテたいの一心でギターを始めたものの、Fコードが押さえられずに挫折したお父さん世代。また、始めてみたいけど練習するのが大変・・・でも、もう一度カッコよく弾きたい。その思いの一点集中で作りました。要は自分がターゲットだったのです」

というストーリーだった。

イノベーティブ・リーダーの語るストーリーはどのようなものであればよいのだろうか?言い換えると、どのような働きかけをすれば人は動いてくれるのか?いくつかある。

・組織や仕事をすることの価値感の共有
・自身の価値感や信念の理解
・モチベーションを高める
・変革の意義を示す

などだ。

◆イノベーティブ・リーダーの語るべきストーリー

最初の、価値感の共有に置いては、プロジェクトの経営的背景、経営ビジョンをストーリーとして語るといいだろう。自身の価値観を理解してもらうには、自分自身の体験を語るのがよい。とくに、何かを学んだ経験や失敗経験は訴える力がある。モチベーションを高めるには、他の社員の取り組み、他の部門の取り組みなどをストーリーとして語ると有効である。さらに、変革の意義を示すには、他社の取り組んでいる事例などを語るとよいだろう。

このように語るべきストーリーはケースバイケースであるが、重要なことは、そこに人が関わっていることだ。ストーリーのチカラは、ストーリーそのものよりも、そこに登場する人物への感情移入であることが多い。主語の見えない組織が素晴らしい成果を生みだしても、人を動かすようなストーリーにはならない。

日本の組織は人が見えることを嫌う。言い換えると、特定の人が「目立つ」ことを嫌う。それにより、他の人のモチベーションが下がると考えているからだ。しかし、この価値観は通用しなくなっている。パイを取り合う競争をしているのであれば、一致妥結して全員が功労者的なやり方もいいだろう。しかし、今の競争はパイを大きくする競争である。パイを大きくする競争には、判断だけではなく、意志決定が必要になる。意志決定にはリーダーが必要である。そしてその意思決定の結果はプラスもマイナスもリーダーが背負うことになる。

突き詰めていえば、ストーリーに感動するのは、置かれている環境における、リーダーの意思決定なのだ。

◆ストーリーの影響力の源泉は「人物」

キンコーズの初期において、こんなストーリーがある。

ある年の12月、キンコーズの店内でコピーに四苦八苦している客がいることに、オペレータのリンダが気づいた。12月というと、クリスマスのことで頭が一杯で、コピーどころではない。不思議に思ったリンダはその客に、何をコピーしているのかと訊ねたところ、客からは予想外の返事が返ってきた。「クリスマスプレゼント用にオリジナルカレンダー」を作っているんだ。毎月、家族の写真を入れて」。リンダはビジネスになるかもしれないと思い、ポール・オーファラCEOに電話をかけ、アイデアを話した。オーファラは興奮し、即座に全店にオリジナルカレンダーサービスを提供するように指示した。そして、この企画がやがて収益の柱の一つである「カスタム・カレンダー」サービスとして定番化される。

これを

ある年の12月、キンコーズは顧客の言動から、オリジナルのカレンダーがクリスマスのプレゼントになるという気づきを得た。そこで、全社を挙げて、オリジナルカレンダーのサービスの試験的提供に取り組み、成功する。そして、このサービスを「カスタム・カレンダー」サービスとして、収益源に変えていった。

と書いてみるとどうだろう。おおよその意味は伝わるし、ビジネスに対するヒントにはなる。しかし、このストーリーが人を動かすことはまずないだろう。最初のストーリーにおけるリンダやオーファラに感情移入するから、よし、自分もやってやろうという気になる。これがストーリにおける人物のチカラなのだ。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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