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第2回 プロジェクトとプログラム(2002.09.19)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆はじめに
 前回の企業活動のすべてをプロジェクトとして位置づけるという話には何人もの方から意見を戴いた。そんなことは非現実的である、そもそも有期性のあるプロジェクトという単位にすべての企業のすべての業務プロセスを割り当てられるのかというものだった。この答えは徐々に明確になっていくと思うので、ゆっくりお付き合いいただきたい。

◆経営戦略の実現プロセス
 さて、今回は、経営活動の中で、プロジェクトがどのように生まれていくか、どのように位置づけられるかという点について考えてみたい。
 戦略的な経営をしていると、当然、経営戦略があるのだが、経営戦略を実現するための方法というのは方程式を解くように論理的に見つかるものではない。理由はいろいろある。もちろん、論理的に考えずに方策を考えているからではない。当然、論理的に考えている。しかし、経営環境の不確実性だとか、人間行動の問題だとかがあり、論理的に進むことは珍しい。ここにプロジェクト経営の一つのポイントがあると考えてよい。

 そこで、戦略実行によく使われる一つの方法として、

 戦略を実現するためにあるべき姿
  → 問題点(現実とのギャップ)
    → 課題
      → 課題の解決策

という図式をたどる方法がある。そして、課題の解決策に優先順位をつけ実行し、徐々にあるべき姿に近づけていくゼロベース思考と呼ばれる方法である。別のゼロベースである必要はないが、重要なことは、いずれにしても、戦略の実現は「問題解決」であるということである。

【問題解決の参考書】
齋藤嘉則, グロービス「問題解決プロフェッショナル「思考と技術」」、ダイヤモンド社


◆問題解決の例
 たとえば、顧客満足度をあげ、一顧客当たりの取引量を大きくするという戦略を立てたとしよう。これが例えば、価格を下げるといった一つのことだけで実現できることではないことは直ぐにわかる。しかし、では、何をすれば十分なのかというのはなかなかわからない。いろいろな情報を集めて分析しても、商品の品質を上げる、サポートを充実させる、価格を下げる、などいくらでも考えられるのが普通だ。従って、いくつかを一度にやってみて、その結果で顧客満足度がどう変わるかを見ながらでないとわからないというのが現実的であろう。ここでの成否はプライオリティの設定にかかっている。これは後で重要になってくるのでよく覚えておいて欲しい。
 この種の問題解決のうまくいった例として、よく日産のゴーン改革が引合にされれるが、まさにこれである。ゴーン氏は目的は財務体質の改善という戦略の実現のために、2年くらいの間に、不採算事業からの撤退、不採算工場の閉鎖、人員削減、プラットホームの見直し、販売店系列など、20本近いプロジェクトを同時に立ち上げて実行し、成功した。この場合でもやはり同時に20本のプロジェクトを走らせたわけではなく、フィードバックをしながら、走らせるプロジェクトを選定している。

◆「原因帰属」思考の限界
 少し話が逸れるが、日本人は心理学でいうところの「原因帰属」的にものを考える傾向が強い。これが80年代にオペレーションによる競争優位の確立ができた原因だと言ってもよいだろう。「原因帰属」的とは、問題に対処するときに「問題をできるだけきちんと説明したい」と考えることである。その方が効果の予測が正確にできるからである。例えば、赤字だから、何とかしたいとする。するといくつかのことが思い当たり、解決策も複数出てくる。そのときに、最もきちんと説明できる問題に対して、最も論理的に説明できる解決を一つやってみる。そしてその結果を見定め、次の手を打つ。いわゆる「改善」である。ところが、オペレーションと異なり、経営の多くの問題は複合的である。従って、「原因帰属」的に考えていると、一つの問題の解消が別の問題を生み、いつまで経っても出口が見えないということがよくある。その場合には、ゴーン氏がやったような複数の方法を一挙に実行し、複合する問題を一度に解決するという手法が有効である。この範囲の問題を解決しておけば、複合して生じる問題もすべて解決するだろうという考えに基づく方法である。個々の問題解決方策は根拠があるが、それで複合問題も解消できるというのはもやもやとしていて、勘に近いところがある。投網という漁の方法があるが、あれに似ているかもしれない。

◆プログラム
 実は欧米の経営手法は、このもやもやとしたところを扱う方法を持っている。「プログラム」という概念である。プログラムというのは、プロジェクトの一種であるが、プロジェクトの集まりだと考えておいてほしい。よく、人材育成プログラムとか、経営革新プログラムとか、計画段階で明確に道筋が見つからないような問題解決では使われる言葉であるので、ご存知の方も多いと思う。
 そして、PMBOK(R)などのプロジェクトマネジメントの手法でもプログラムをマネジメントする方法も持っている。日本でもP2Mという標準では、プログラムのマネジメントについて言及されている。

◆プロジェクトマネジメントの経営適用はプログラムで
 プロジェクトマネジメントを経営に適用する場合には、このプログラムという概念が極めて重要である。戦略課題という漠とした問題に対しては、問題解決プログラムとして問題に取り組み、複数のプロジェクトを立ち上げ、様子を見ながら、プログラムに含まれるプロジェクトのプライオリティをコントロールすることによって、問題の解決にたどり着くというマネジメントができるからである。
 著者はよくプロジェクトというのは「曼荼羅」構造をうまく捉えるとうまくマネジメントできるという説明をする。「曼荼羅」構造については、また戦略ノートで触れるが、プロジェクトとプログラムというのもその関係にある。プロジェクトとプログラムの違いは、プロジェクトとタスクの違いに似ている。何をプロジェクトとし、何をプログラムとするかをよく考えなければプログラムの成功、つまり、目的の達成はおぼつかない。ここは一緒である。しかし、本質的に異なることがある。それは、プログラムに含まれるプロジェクトは問題解決の方向を正しく保つために、いつでも止めることができなくてはならないことである。これがプログラムとしてのリスクマネジメントになるし、また、プログラムが不確実性に対処する手段になる所以である。

 では、プログラムのマネジメントはどのように行うのか?次回からこの問題について考えて行きたい。

【プログラムについての参考書】
小原重信「P2M入門―価値創造の新しい「仕組み」 プロジェクト&プログラムマネジメント」H&I


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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