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第4回 外国人とのITプロジェクト・チームで必要なコミュニケーション・スキル (2007.08.31)

永谷 裕子


男性と女性のギャップ、世代のギャップに続いて、今回は外国人と日本人のギャップを見てみましょう。つまり異文化を知ることから始まる異文化コミュニケーションの世界です。異文化コミュニケーションのスキルは現在の国際化するITプロジェクトではますます重要視され、プロジェクト・マネジャーが習得しなければいけないスキルとされています。まずその異文化ですが、文化とは何でしょうか?

文化には目に見える文化があります。言葉、自己表現スタイル、音楽、絵画、食べ物、しぐさ、服装、宗教などです。 やっかいなのは、目に見えない文化です。親子関係、価値観、意思決定方法、友情・恋愛の概念、時間の感覚、宇宙観、子育ての方法、問題解決の方法などです。 このような個人の持つ文化の違いからくるコンフリクトは、単に外国人と日本人との間の問題だけではなく、多様化し、流動化している今の日本では、日本人同士でもあたりまえのように起こりえる問題である、が筆者の主張するところです。そして相手が日本人であっても外国人であっても、相手とのギャップを埋めるのが、コミュニケーションのツールであり、ルールであるのです。

コミュニケーションのルールのベースにあるのは、相手を知ることであったり、尊重することであったり、傾聴の精神であったり、プロとして、自尊心と職業倫理感で築いていく人間関係でありますから、日本人と外国人の問題も、今までの議論とあまり変わらないはずです。 そして、外国人のなかには、日本人より日本的な人がいますし、日本人にでも外国人のような人どころか、宇宙人もいます。そんな中、あえて外国人との関係について探っていく意味はあるのでしょうか?

あるとするとそれは言葉を使った話し方の問題と筆者は考えます。言葉というと英語、日本人は英語が苦手、だから大問題という図式を考えますが、筆者の意図は違います。確かに英語は出来た方がベターです。でも、日本人で英語が堪能な人の方が外国人とコミュニケーションが取り難いことがあります。自分は英語が上手と思っている人が、自分の英語力を誇示するあまり、しゃべり続けるケースです。重要なことは、相手に分かりやすく説明するという基本がなくてはコミュニケーションが成り立たないということを認識することです。日本人、得にIT業界ではこの分かりやすく説明するのが苦手な方が多いのです。日本語が堪能でない外国人と通訳を通して話をする際、重要なのはプレゼンテーション・スキルなのです。日本人のビジネス・パーソンの多くの方は、これが苦手なのです。

私の友人にITプロジェクト専門の同時通訳者がいます。彼女のフラストレーションは半端ではありません。通訳をしようにも、(説明者の日本人が)何を言おうとしているのかが分からない、話の主点が何なのかわからない、話の軸はぶれっ放し、自分の主張に固執するあまり相手(外国人)の話しを聴かない、彼女を無視して、中途半端な英語単語の羅列で相手を混乱させる、こんなケースがとても多いそうです。これでは日本人同士でも、効率的なコミュニケーションは成立しません。でも日本人同士だと時間をかければ分かり合うこともあります。

ところが言葉が通じない外国人だと、時間をかければかけるほど混乱が生じてしまうことがあるのです。一般的に外国人は(日本人には攻撃的とも取れるような)自分を主張するのに長けており、表現も直接的で曖昧さを残しません。それは良いとか悪いとかではなく、まさに文化の違い、彼らの自己表現スタイルなのです。それに対抗するに、日本人も慣れない直接表現や、自己主張をする必要は全くありません。自分の表現スタイルでのプレゼンテーションでいいのです。

ここでプレゼンテーションの基本を上げます。スピーチやプレゼンテーションの基本は分かりやすく、相手の興味をひきつけ、上手く表現する、です。中でも重要なのは、分かりやすくの部分です。 話しを分かりやすくするには色々なテクニックがあります。ひとつにシナリオがしっかりしている、つまり話しの構成が出来ているがあります。Who :誰に、What:何を、Why :どうして→必要性、Which :どのやり方で→選択肢やソリューション、How :どのように、が明確であることです。

知人のある人は、話をする時には文字で書いたり、絵を描いたりして、説明します。そして相手が理解しているかどうかを確認します。その人は英語は出来ませんが、日本語が日常会話程度できる外国人とのコミュニケーションは問題なく取れています。 話が複雑になると、通訳を付けます。話の構成がしっかりしていると通訳はやりやすいはずです。

最後にコミュニケーションの重要な要素に想像力があることを強調したいと思います。相手の立場を想像する、相手の価値観を想像する、相手がどの程度、話が分かっているかを想像する、相手の理解は多分こうだから、このように反応するかもしれない、だからこのように話をしてみよう、と想像し、トライし、双方で確認しあうのも、コミュニケーションです。 繰り返しますが、この想像力は相手が外国人であっても日本人であっても同じです。ただ、相手が外国人の場合、または宇宙人の日本人の場合、その想像力を駆使する努力が更に必要となるのです。

著者紹介

永谷 裕子 
MBA, PMP, JUAS認定システムコンサルタント
米国オハイオ州マローン・カレッジ卒業(心理学)。米国オハイオ州立大学でMBA取得。同州の保険会社でプログラマーとしてスタートする。その後、ユーザー企業(主に多国籍企業)、情報処理サービス会社においてSE、ITプロジェクトマネジャーとして多数の情報システム開発プロジェクトに参画する。特に国際的なITプロジェクトに豊富な経験をもつ。2011年まで、PMI日本支部の事務局長としてプロジェクトマネジメントの啓蒙・推進・指導などの活動にあたっている。 著書”ボーダレス時代を生き残れる人、生き残れない人” 訳書(共訳)に”プロジェクトマネジメント・オフィス・ツールキット“(Jolyon Hallows)がある。

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