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第2回 ジェンダー(男性・女性)の課題 (2007.06.22)

永谷 裕子


PMIのアメリカ大会やアジア大会に参加していて感じることは女性が多いことである。 翻って、PMI東京支部開催のイベントは断トツ(ほぼ90%)男性の参加者が多い。それをそのまま拡大解釈すると、日本ではITのPM.PLは男性社会であるという構図が浮かんでくる。 手元に統計はない、が、かなり現実に近いと思われる。ITに限らず、殆どの職種で女性の管理職は少ない。女性の管理職の比率を上げるのは、大手の会社が近年始めている企業のダイバシティー活動の成果に期待しよう。また出産や育児とキャリアの両立の問題や、これを支える企業や国の取り組みは重要な要素であるが、ここではふれない。ここで取り上げたいのはITプロジェクトではなぜ女性が少ないか、どうすれば男女比をあげることが出来るか、である。(男女比をあげる必要はないと考える人は読者の中にはいないことを願っている)

さて、IT業界に女性が少ない理由の一つはITの仕事は理科系と捉えられており、女性自身が敬遠しているむきがあることである。 次にITの職場はきつい、汚い、帰れない、のいわゆる3Kの職場のイメージがあって、(残念ながら実際はそうである)それだけでも女性が惹かれる職場環境の華やかさからはほど遠い。この点は若者も同じように思っているらしく、SEの仕事は若者に敬遠されている。また現在のIT業界は男性社会であるのは間違いない。キャリアの女性の社会進出が本格的に始まったのは20年ほど前であり、男性社会が先に作られたのである。従って、後発組の女性は快く迎えられなかったようだ。男性同士で繰り出す飲み会や、タバコルームでの非公式な打合せに女性が入っていくにはかなりの勇気が必要だったりする。事実、男同士の非公式な打ち合わせでプロジェクトが進んでいく現実に嫌気がさして、ITのリーダー職を捨てた女性を知っている。プログラマーやSEまでは女性はなれるが、リーダーやマネジャーといった管理職になかなか成りにくい、また女性も成りたがらない。伝統的な男の職場の隠された掟がまだまだある社会に入り込むにはハードルが高い、それを乗り超えるのは男性以上に仕事をしなければいけない、それに価値を見出す女性もそんなにいない、と、この議論をするときりがないので、この辺でやめておく。 

仕事において能力や特性での男女差はあるのだろうか?人口の半分は女性であるから、男女の相違を上げることは、血液型による性格判断以上にアバウトなものになってしまうが敢えてよく耳にする話や社会通念を総括すると、こんなようになる。○ 女性は言語能力が優れており、コミュニケーション能力や対人スキルに優れており、回りの人間の感情に敏感である。チームの雰囲気、誰と誰が仲がいいか、など横の人間関係に敏感である。○ 反面、論理的やシステマテックに物を考えるのが苦手である。○ 女性は自分のため、自分が楽しめる仕事を優先し、長期的あるいは組織的な観点から仕事を捉えにくい。○仕事のルールの遵守、これは女性が得意。女性は、正当論をぶちまける優等生が多い。○男性は緻密な物つくりが得意で、物つくりに独創性と執着を示す。技術者魂である。○ 男性は会社社会で組織の上下関係を大切し、上昇志向が高く、プライドと面子を重んじて、保守的である。今の日本の会社という組織で生きるには男性的志向のほうがフィットするのかもしれない。 

このようなステレオタイプ的なコメントに筆者は概ね同意するが、女性が感情的で冷静さに欠け、涙に象徴される感情の起伏が激しい、これには同意しがたい。 プロジェクトがうまくいかない時、怒鳴ったり、威嚇したり、相手を攻めたり、エネルギーが極端に枯渇するのは男性が多い。苦境で元気になるのは女性だったりする。

さて、ではこのような女性には入りにくい男性社会への心理的な壁、そして男女の違いを踏まえて、どうしたらITプロジェクトに女性が積極的に参加できるのだろうか?

ITプロジェクトは様々なスキルが要求され、個々のメンバーが己のスキルと特性を持ちよって作られる世界である。ハードスキルにソフトスキル、オタクの男性の専門的スキルや女性の細やかさや気配り、みな大切なスキルである。女性の破壊的にも柔軟な考え方で硬直状態であった状況にブレークスルーが見られたり、暗いが真直ぐな若いSEのグループに高いEQの女性メンバーを加えることで、チームのモラールが上がったり、これは私が経験してきたことである。 ITプロジェクトこそ男女の持っている特技をチップインできる最高の場、プロジェクトマネジャーは個々のメンバーが持つハードスキルだけではなく、性格や感性といったような特性もチーム作りに生かしていかなければいけない。チーム・メンバーの多様性は上手く機能するとチームの活性化につながる。縦糸(男性の組織思考)と横糸(女性のコミュニケーション重視の人間志向)を上手く結ぶとより強い糸ができたりするのである。プロジェクト・マネジャーに要求されるのはこのアートディレクター的スキルである。

ITのプロジェクトでどうしたら男女共存ができるのかの課題には、ITの職場がプロの集団となったときにその断層が埋まると私は考える。 プロとしての自覚と自信、個としての自立があれば、相手を個として尊重でき、多様性をひるむことなく受け入れていけるはず。そこでは不安感からくる嫉妬や、いじめや、相手を疎外する子供じみた行為がなくなる(はず)である。適切なスキルを持ったプロジェクト・マネジャーを会社が育成し、そんなマネジャーの元でプロとしてのスキルを明確なキャリアパスで進んでいける、このようなITプロジェクトは決して、他人への思いやりと信頼感から自然と生まれるチームで仕事を成し遂げ、一緒に達成感を喜び合う日本的なNHKのプロジェクトXにあるような精神と矛盾していないはずである。

そして、プロジェクトマネジメントの浸透でITプロジェクト・チームがプロ意識を持ったメンバーの集団になり、3Kがかっこよく、毅然として、キャリアアップの環境になったら、女性も若い男性も集まってくれるかもしれない。 PMI東京支部がそんな企業文化を創り出す活動をサポートできたらと願っている。

著者紹介

永谷 裕子 
MBA, PMP, JUAS認定システムコンサルタント
米国オハイオ州マローン・カレッジ卒業(心理学)。米国オハイオ州立大学でMBA取得。同州の保険会社でプログラマーとしてスタートする。その後、ユーザー企業(主に多国籍企業)、情報処理サービス会社においてSE、ITプロジェクトマネジャーとして多数の情報システム開発プロジェクトに参画する。特に国際的なITプロジェクトに豊富な経験をもつ。2011年まで、PMI日本支部の事務局長としてプロジェクトマネジメントの啓蒙・推進・指導などの活動にあたっている。 著書”ボーダレス時代を生き残れる人、生き残れない人” 訳書(共訳)に”プロジェクトマネジメント・オフィス・ツールキット“(Jolyon Hallows)がある。

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