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第11回 「対話(Dialogue)」によるコミュニティ・マネジメント」(2009.03.31)

オープンウィル代表 中村 文彦


【情報通信提供サービス企業内の自主学習会における対話シーン】

進行役 「本日の学習会は、事前にご案内したとおり、Aさんからの提案で、『私たちのプロジェクトはお客さんや仲間に感動を与えているか?』をテーマに自由な意見交換をしたいと思います。」

参加者A「抽象的で少し哲学的なテーマかもしれませんが、本日はこのテーマを下にいろいろと話し合ってみたいと思っています。よろしくお願いします。」

参加者B「ちょっと良いですか?進め方について提案があるのですが・・・。」

進行役 「はい、どうぞ。」

参加者B「自分としては、なぜAさんがこのテーマを設定したのか、その理由から説明して欲しいと考えているのですが、他の皆さんはいかがでしょうか?」

進行役 「なるほど、Bさんとしては、Aさんがこのテーマを設定した背景を聞きたいと思っているのですね?」

参加者B「はい。このテーマを見た時に、きっとAさんには、『仕事を通じて他者に感動を与えるべき』という考えがあるのだろうなと思いました。」

参加者A「そうですね。与えるべきというより、与えたいという想いですが。」

参加者B「率直に言えば、私は誰かに感動を与えたいと思って仕事をしたことはありません。このテーマを見た時も、いくつか疑問が心に浮かびました。ただ、あれこれと個人的な意見を言う前に、そもそもAさんの言う感動とは何か、なぜAさんが感動を与えたいと思っているのかを、ちゃんと理解してから発言したいのです。」

参加者A「わかりました。では、もし皆さんがよろしければ、なぜ私がこのテーマを選んだのかについて、エピソードを交えて説明したいと思います。」

   *   *   *   *   *   *   *   *   *

 社会や企業の中には、組織図と組織規程で定められる公式組織や、経営判断により公式に立ち上げられたプロジェクトの他に、組織図や組織規程には表わされない非公式的なコミュニティが存在します。
 企業やチームや個人がプロジェクトマネジメントの能力を高め、新たなプログラムやプロジェクトを創出することによって社会や組織に対して価値のある変革を起こすためには、公式組織や公式プロジェクトだけではなく、活力のあるコミュニティの存在が重要です。なぜなら、このようなコミュニティは公式組織や公式プロジェクトが持つ弱みを補うことのできる強みを有しているからです。そして、コミュニティの持つ強みは「対話(ダイアログ)」により、さらに強化されます。

 公式組織や公式プロジェクトは、職務責任の達成が何よりも重要な使命です。設定されたゴールを、権限と管理によって達成することが基本となります。しかし、そこには次のような弱みがあります。

 ・メンバーは命令により配属されるため参画意識が低くなりやすい
 ・閉じられた組織のためモチベーションの低いメンバーが残留している
 ・上司による命令や支配が存在するため主体性が低下しやすい
 ・管理やルールが強化されると思考停止に陥りやすい
 ・スピードや効率が求められるため合意形成が表面的になりやすい
 ・効果が出るまでに時間を要する課題に取り組みづらい

 一方で、コミュニティはオープン性と自由度が高いため、公式組織や公式プロジェクトよりも創造性を発揮しやすいという特徴があります。また、プロジェクトと異なり明確なゴールが設定されていないため、スピードや効率が求められることがありません。そこからは次のような強みが生まれます。

 ・本人の自由意思で参加するため参画意識が高い
 ・開かれた組織のためモチベーションの低いメンバーが少ない
 ・ボランティアによる運営が基本であり、主体性が高まりやすい
 ・管理やルールから解放され、自由な発想がしやすくなる
 ・本音や感情を出しやすく、時間をかけて深いレベルの合意形成が可能となる
 ・効果が出るまでに時間を要する課題に取り組むことができる

 そして、コミュニティが活力を持つ上で、重要な能力が「対話(ダイアログ)」の能力です。コミュニティが持つ強みにより「対話(ダイアログ)」を基盤とした場が自然と生まれやすくなり、そのような場の存在によりコミュニティの強みがさらに強化されるという好循環が発生します。
 好循環が発生し、「対話(ダイアログ)」によりコミュニティがマネジメントされることで、公式組織や上下関係、異質な文化を越えた交流やコラボレーションが行われるようになります。これらの交流やコラボレーションを通じて、以下のようなことが組織やチームや個人の中に発生するのです。

 ・事象や問題を全体性や関連性でとらえることができるようになる
 ・全体的な問題が設定され、組織の壁を越えた問題解決が行われる
 ・異質な人材が想いや経験を語り合うことで、新たなビジョンやナレッジが創造される
 ・権力や権限によらないリーダーシップが醸成される
 ・深い内省の場が提供され、進むべき未来が明らかになる
 ・目的を明確に定義できない事象に対する探求が行われる
 ・新たなプログラムやプロジェクトが創出される


著者紹介

中村 文彦    オープンウィル代表 中小企業診断士

1962年生まれ。明治大学文学部卒。大手食品メーカーの戦略的物流システム開発プロジェクトにプログラマーとして従事した後、営業およびプロジェクトマネジメントを担当。その後、中堅情報サービス企業にて、経営管理全般および組織開発・人材開発を担当し、独立。また、NPO日本プロジェクトマネジメント協会(PMAJ)に所属し、各種研究会やPMシンポジウムの企画・運営等のプロジェクトマネジメント推進活動に参加している。
中小企業診断士、経済産業省認定情報処理技術者(プロジェクトマネージャ、上級システムアドミニストレータ)
著書『ITプロジェクを失敗させる方法 〜失敗要因分析と成功への鍵』ソフトリサーチセンター

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