スキル育成には、アビリティ（能力）とコンピテンシー（実践力）の育成が必要であり、コンピテンシーを身につけることが人材育成である

第１３回　チーム育成（２）〜スキルとは何か（2005.04.26）

プロジェクトマネジメントオフィス　好川　哲人

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スキル＝アビリティとコンピテンシー

スキルという言葉は分かったようで、あまりよく分からない言葉である。チーム育成のためにはスキルを習得させることが必要だが、スキルが何かを知らないと空回りする。今回はこの問題を整理しておきたい。

能力という言葉で辞書を引くと、アビリティ（ability）、パワー（power）、ケイパビリティ（capability）、コンピテンス（competence）、ファカルティ（faculty）といった言葉が出てくる。一方で、スキル（skill）という言葉を引くと、熟練、腕前といった訳語が当てられている。

ここで注目したいのは、アビリティとコンピテンスのニュアンスの違いである。アビリティというのは実際にものごとをできる能力のことである。たとえば、中国語がしゃべれるといった能力だ。ところが、中国語がしゃべれるだけで中国人とコミュニケーションができるかとなると別問題である。それこそ、今、問題になっている歴史的背景、文化的背景を知らないとコミュニケーションはできないと考えた方がよい。コンピテンスというのはこういう能力の意味あいで使われる言葉である。つまり、基礎能力としてのアビリティを持つ人が、「相手が何を期待しているかを把握し、その相手の期待に応えるために自分の持つアビリティを活用していく能力」がコンピテンスである。したがって、コミュニケーションというのはコンピテンスになる。

さて、では、問題の「スキル」という言葉は何を意味しているのだろう。スキルという言葉を使うときには、あまり一般的な意味では使わない。タスク（特定の仕事）ベースで使うことが多い。たとえば、「中国人に中国語で、システムの仕様を伝える」というスキルを考えてみれば、コミュニケーションのコンピテンシー以外に、システムに関する専門能力（アビリティ）が必要になる。

このように整理してみると、スキルとコンピテンシーの間には、オーバーラップはあるが包含関係はない。以下のようないずれの関係も考えられる

　スキル＝アビリティ
　スキル＝コンピテンシー
　スキル＝アビリティ＋コンピテンシー
　スキル＝アビリティ＋コンピテンシー＋タスクプロセス実行能力

このほかにも組み合わせはあるだろう。

スキル育成というと、アビリティに関心がいくが、本来はそうではない。特にプロジェクトのチーム育成としてスキル育成を行わなくてはならない場合は、この点が重要になる。アビリティのような広い範囲ではなく、そのメンバーが実行できるようになってほしいスキルをできるだけ限定し、その上で、アビリティ（専門能力）とコンピテンシーを身につけてもらう必要がある。

今後、プロジェクトの中でも、ワークプレイスラーニングが進んでいくことが予想される。プロジェクトワークプレイスでワークプレイスラーニングを進めていくには、タスクの明確化とそのタスクの実行能力としてのスキルの獲得が不可欠である。

（次回につづく）


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• 一覧
• 第１２回　チーム育成（１）〜チーム育成とは（2005.04.19）
• 第１４回　チーム育成（３）〜チーム育成の戦略（2005.12.05）

著者紹介

好川哲人、ＭＢＡ、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
１５年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
１万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン（無料版）」、「PM養成マガジンプロフェッショナル（有料版）」や「プロジェクト＆イノベーション（無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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