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第8話:コンセプチュアルな計画とは何か(2013.11.23)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆マネジメントとリーダーシップ

今回は計画の話をしたいと思います。どのような仕事においても計画は重要な仕事です。しかし、自分の仕事は不確実性が高く、計画はできないので、走りながら考えるという人もいます。まず、この問題から考えてみたいと思います。

計画の話に入る前にマネジメントとリーダーシップの話をしておきたいと思います。よくマネジメントは既存の枠組み(ルール、仕組みなど)の中で何とか目標を達成することで、リーダーシップは枠組みを変えることだと言われることがあります。

違う言い方をすれば、複雑性の高い仕事をするにはマネジメントが必要で、不確実性の高い仕事をするにはリーダーシップが必要だということになります。

この考え方はハーバードビジネススクールのジョン・コッター先生の定義で、他にも定義はいろいろありますので、自分の考えと違うと思う人は読み流してください。


◆マネジメントの手段は計画

さて、このようにマネジメントとリーダーシップを定義すると、マネジメントでもっとも重要な手段は計画です。

既存の枠組みの中で仕事をするというのは工場のラインのように粛々と目の前のことをやっていれば成果が生まれるということではありません。それどころか、既存の枠組みでは入らないところを何とか収めようとするので計画が必要なのです。

言い換えると、複雑性に対処するために計画が必要なのです。たとえば、業務標準があり、その通りに仕事を進めていくと納期が守れそうにないとします。そんなときに、一つ一つの作業の方法を見直し、ちょっとずつ時間を短縮し、全体で納期に間に合うような計画をし、その計画通りに仕事をコントロールすることがマネジメントです。


◆リーダーシップに計画は要らない?

これに対して、リーダーシップのもっとも重要な手段はビジョンです。ビジョンを実現しようとメンバーに働きかけます。したがって、業務標準がビジョン実現の邪魔になれば、業務の遂行方法そのものを変えていきます。自分の仕事は不確実性が高いので計画はできないというのはリーダーシップとしての仕事をしているケースが多いようです。

この問題はしばらく置いておきます。


◆見積もりに有効性に対する3つの疑惑

さて、本題に戻ります。まず、考えてほしいのは計画とは何かということです。よく「見積もりの精度」ということをいいますが、「この仕事はこれだけの時間かかるだろう」という推定の精度を上げると言う意味です。

ここで考えてみたいのはこんな推定が本当にできるのかということです。この疑惑の背景にはいくつかの要因があります。

一つは仕事の段取りをそんなに正確に決められるのかという点です。たとえば、工場の作業であればこの部品の取り付けに1分、次にこの作業の3分というふうに見積もることができますが、これは作るものも同じで、作業にも再現性があるからです。再現性がなければそんなに正確に見積もりをすることはできません。

次は人の能力の問題。この問題は工場のラインでもありますが、人によって能力が違えば作業効率も変わってきます。特に、ソフトウエアでこの問題はよく言われる問題ですが、知的生産の仕事は基本的にこの問題を抱えています。工場のラインの場合には、ラインというシステムで時間をコントロールしますが、不定型な業務の場合基本的にはコントロールできません。

さらに効率のばらつきです。人間が仕事としている限り、調子が良い日もあれば悪い日もあります。このばらつきをどのようにして考慮するのかが問題になります。


◆見積もりの精度は必要なのか

一般的にいえば、ばらつきの問題についてはスケジュールのPERTのように確率的な取り扱いをするのが一般です。品質などについても同じです。

では、なぜ計画に精度が必要なのでしょうか?必要ならどの程度の精度が必要なのでしょうか?ちゃんと答えるのは意外と難しい問いです。

上に述べたような点も考慮した上で考えると、結局、仕事をするチームで共有されるべき仕事の段取りであり、進捗の目安になるからなのです。逆にいえば、これが計画を作る目的だと言ってもいいと思います。だから、見積もりは確率的な数字で十分なのです。

この目的から考えると計画の違った面が見えてきます。


◆計画は意思決定

計画というのは客観的な積み上げのように考えている人がいますが、それは一面にすぎませんし、見積もりのところで述べたようにそれだけでは計画ができないという現実もあります。

ではできない部分はどうするのか?こうやると決めたものが計画です。勘違いないようにしてほしいのですが、たとえば10日かかる仕事を1日でやると決めたものが計画というではありません。8日から12日くらいかかりそうだと思うものを10日でやると決めたものが計画です。決めた以上、結果として12日かかるものだったとしても10日でやります。

つまり、計画というのは積み上げて作るように見えて、実は意思決定なのです。

10日でやると宣言しておいて、後になってもう2日ほどくださいというのであれば、最初の10日でやる計画ではありません。よく段階的詳細化という概念を勘違いしている人がいますが、8日目くらいにそのあとすべきことがはっきりしてきて詳細な計画を作るわけですが、このとき12日にするというのはあり得ません。自分が決めたことですから。

実はこれが冒頭のリーダーシップに計画は要らないのかという問いの答えでもあります。計画は意思決定ですから、リーダーシップを発揮したいときこそ、重要だと言えます。


◆計画は科学であり、アートである

もう一つ見積もりが難しい例を挙げてみましょう。不確実なケースではなくても、大規模で複雑な仕事になってくると見積もれない場合がよくあります。このような場合にはどうすればいいのでしょうか?答えは簡単で、勘で計画します。KKDとかいって勘はマネジメントの敵みたいに言われていますが、実はそうではありません。KKDはいずれも重要なのです。ただ、これだけでやろうとするところに問題があります。

たとえば、見積もりではなく、勘で計画する。そして、勘で計画したものをシミュレーションしてみます。それで辻褄が合わない部分があれば修正する。このように勘も論理と組み合わせることによって計画の重要な手段になってくるわけです。

このように計画は科学であり、意思決定(アート)でもあります。見積もりなどの科学の部分だけをいくら極めても有用な計画はできません。科学とアートをうまくバランスさせるのがコンセプチュアルな計画なのです。


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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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