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客観とは間主観である。すべては主観から始まり、相手を理解し相手の立場で考える洞察によって、客観化することができる

第12話:5つの軸について考える(3)〜主観なくしてダイバーシティなし(2015.03.25)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


◆主観と客観

抽象と具象、直観と論理に続く3番目の軸は主観と客観です。

一般的にビジネスや仕事の中に主観を持ち込むことはよいことだとされません。この是非については後で議論しますが、その前に客観的であるとはどういうことか考えてみましょう。

辞書(大辞泉)を引くと

1 主観または主体を離れて独立に存在するさま
2 特定の立場にとらわれず、物事を見たり考えたりするさま

とあります。客観的の逆は主観的ですが、主観的であるとは

1 表象・判断が、個々の人間や、人間間の心理的性質に依存しているさま
2 自分ひとりのものの見方・感じ方によっているさま

とあります。つまり、客観的であるというのは自分の立場にとらわれないで、物事を見たり、考えたりするということです。逆に主観的に考えるというのは自分の立場から物事を見たり考えたりするということになります。


◆客観とは間主観である

どうでしょうか?主観的に考えるというのは悪いことだと思いますか?どうでしょうか?このように言われると、客観的であることがよくて、主観的であることが悪いとは一概に言えないという考えになりませんか?

もう少し、考えてみましょう。特定の立場にとらわれないというのはどういうことでしょうか?どんな立場から考えても、そのような立場の人はいるわけですので、これは非常に難しいことです。仮にいろいろな立場から考えても、最終的に結論を出すにはいずれかの立場を取る必要があります。

その際に、100人が100人納得する結論であれば、立場にとらわれていないと言えるかもしれませんが、そのようなことはなかなかありませんし、考えや見方が客観的かどうかをどのように判断すればいいのでしょうか。

ここで面白い概念があります。それは間主観性という概念です。上に述べたように客観的であるというのは、当事者も非当事者も含めて共通の認識であることですが、当事者の間だけでは共通認識であるというのが間主観性と呼ばれる概念です。

まず、我々がビジネスの中で使う客観的であるべきだというのは、間主観的であるべきだということです。


◆客観にこだわるのはなぜか?

その上で、改めて主観的であることは好ましくなく、客観的であることは好ましいのはという問題を考えてみましょう。

たとえば、プロジェクトのスケジュールが遅れているとします。ルールでは10%以上の遅れがあれば遅れたと認識して手を打とうということになっています。これはスケジュールの遅れという主観が入りやすいところを客観的にしようと努力しているわけです。

では、このときプロジェクトリーダーはこのままでいくとまずいと思っていたとすればどうでしょう。これは主観ですので、無視していいのでしょうか?言い訳はありません。そのように感じているのであれば、それなりの対処をすべきです。

ここで一つ考えておかなくてはならないことは、スケジュール遅れのような問題現象が起こったときに、それを問題だと思うかどうかというのは本質的に主観的なものです。問題解決の言葉でいえば、問題には主体者(オーナー)がいて、主体者が問題と思えば問題ですし、問題だと思わなければ問題ではないのです。

一般的に組織としてそれではガバナンス上まずいので、どのようなときに問題だとするかをルールにしていることが多いのです。


◆すべては主観から始まる、ただし、、、

そのように考えると、客観的であることが悪いことだとは一概に言えません。問題解決に限らず、主観的であることが需要な局面も多くあります。たとえば、製品のデザインを決めるときにみんながいいというものは避けた方がいいということをいう人が少なからずいます。

問題は主観だけで突き進んでしまうことにあります。上のスケジュール遅れにしても、自分がまずいと思って、何か手を打つ場合には、客観的にみてどうだということを考えてみる必要があります。でないと、いわゆる「独り相撲」になってしまします。

つまり、当事者(この場合ステークホルダー)の間で間主観的であることが求められるわけです。ただ、プロジェクトだといってもそのためにいちいち聞いてみるわけにはいきませんので、自分で客観的な判断することが必要です。


◆どのように客観性を担保するか

その場合、有効な方法は「○○さんの立場になって考える」ことです。たとえば、ルール上は遅れではないのに、遅れていると思うと上司にいえばどう判断するだろうかと考えてみることです。難しいのは、上司の主観を洞察しなくてはならないことです。口でいうのは簡単ですが、これが現実には難しいわけです。

相手の立場で考えようとすれば、まず相手を理解することが必要になります。たとえば、上司は遅れに対して厳しい見方をするといったことです。これは抽象的な思考です。何%以上遅れると遅れていると思うかといったわけではなく、もっと曖昧な話です。このように相手を抽象的に理解しておいて、具体的な状況でどう考えるかを洞察しなくてはならないわけです。

もうお分かりだと思いますが、この洞察をするには、抽象と具体の軸を自由に行き来できなくてはなりません。つまり、主観的に考えて、客観化するというということがあまりなされず、入口ともいえる主観的に考えることを排除しようとしているのはそのあたりに問題があるからだと思われます。

この問題が解決される、つまり、抽象と具象を自由に行き来できるようになれば、主観的に考えることは個人としても組織としても大きな武器になってくることは間違いありません。


◆ダイバーシティというもう一つの問題

組織レベルでいえば、この問題はダイバーシティの問題として認識されています。つまり、いろいろな主観をまとめて、組織として客観できないとダイバーシティは実現できませんが、上に述べたような事情でこれができないので、せっかく多様なアイデアがあるにも関わらず、誰もが納得するような平凡なアイデアにまとめてしまうということが行われています。

この問題も主観と客観の問題として解決していかなくてはイノベーションなど夢物語に終わってしまうでしょう。

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著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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