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第5回 本質を見極める3つの方法(2017.11.07)

プロジェクトマネジメントオフィス 好川 哲人


☆これまでの記事

第1回 なぜ、ITプロジェクトは混乱するのか

第2回 プロジェクトにおけるコンセプトの位置づけ
第3回 なぜ、コンセプト力が必要なのか
第4回 プロジェクト課題の本質を見抜く

第4回から続く)
◆本質を見極める3つの方法

では、本質を見極めるにはどうすればよいのだろうか?ここでは、

(1)概念的に捉える
(2)構造的に捉える
(3)直観的に捉える

の3つの方法を紹介したい。

(1)の概念的に捉えるとは、「WHY」によって理由を掘り下げていくことによって、概念を分析していくことだ。代表的な方法には、ラダリング、なぜなぜ分析、トヨタの5Whyなどがある。

(2)の構造的に捉えるとは、「WHAT」を関連付けで構造を見ることによって、構造的に分析をしていくことだ。代表的な方法にはシステム思考の因果ループ図や、相関関係図などがある。

因果ループについては、下記コラムをご参照ください。

 PMの道具箱 第77回 システム思考のツール:因果ループ図

(3)の直観的に捉えるとは、直観的に感じた本質を確かめていくことであり、代表的な方法として、仮説検証などがある。

それぞれの方法について例について考えながら説明していこう。


◆本質を概念的に捉える

まず、概念的に捉える方法として、「WHY」の繰り返しによって本質を捉える方法を考えてみる。この方法には、なぜなぜ分析、5WHY分析など良く知られた方法があるので使われたことがあるかもしれない。

第1回から取り上げている下記のプロジェクトの課題の本質について考えてみよう。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ある通販会社で経営層から「ロイヤルカスタマー戦略のテコ入れによる収益向上┃
┃」という戦略が打ち出された。                      ┃
┃その実行の一環としてロイヤルカスタマーへの新たな働きかけをする、これまで┃
┃にはない仕組みの構築を課題としたプロジェクトを実施することになった。  ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

プロジェクト課題として「ロイヤルカスタマーへの働きかけをするこれまでにはない仕組みの構築」を設定している。ここからこの課題の本質をWHYを考えることによって見極めていく。まず、最初の「WHY」で「ロイヤルカスタマーの満足感の向上」という要素が出てきて、そこからさらに「WHY」で掘り下げていく。

「ロイヤルカスタマーの満足感の向上」
      ↓
「ロイヤルカスタマーのコミットメントを高めたい」
      ↓
「競合から守りたい」 ┬→「割引率の向上」
           └→「ロイヤルカスタマーむけのロイヤルティ制度の導入」


すると、上記のようになり、「競合から守る」ことがプロジェクト課題の本質だと考えられる。そこで、今度は、この課題に対して課題解決(プロジェクト)のコンセプトを考える。

たとえば、解決策のアイデアとして「割引率の向上」と「ロイヤルカスタマーむけのロイヤルティ制度の導入」の2つが出てきたとしよう。割引率の向上は個々の取引の話であって競合から守るという本質にはあまり効果がなさそうである。これに対して、ロイヤルティ制度の導入は競合から守るという課題の本質に整合した解決策である。従って、コンセプトとして適しているといえるが、この点については後で触れる。

このように「WHY」を使って本質的な課題を見極めていくという非常にシンプルな方法で、もっとも使いやすいものだが、意外とうまくできない。これは「WHY」に対する答えが適切ではないためだ。

例でいえば、「ロイヤルカスタマーのコミットメントを高めたい」の理由を「競合から守りたい」としているが、ここは例えば、「ロイヤルカスタマーの売上げを向上したい」という理由付けをしてもおかしくない。このように課題設定すると、解決策は売上げ向上策になり、考えた本質とは議論が違う方向に進んでしまう。

このようにならないようにするには、

・「結論 なぜならば 根拠」 は納得できるか
・「根拠 だから 結論」 は納得できるか

の両方を考えてみる必要がある。ここで注意しておきたいのは、納得性にはある程度主観的な判断が入ることだ。これによって主観的な判断であると同時に、誰もが納得しやすい「WHY」になることが期待できる。

なお、この方法ではコンセプチュアル思考としては

・抽象/具象

の思考軸が中心になっている。これについては、次回以降に詳しく説明する。


◆本質を構造的に捉える

次に、構造的に本質を捉えることを考えてみたい。構造的に本質を捉えるとは、関連する要素間の関係づけをした上で、その関係から本質が何かを考えるという方法である。代表的な関係には、要素間に何らかの関係があるだけの相関関係と明確な因果がある因果関係があるが、ここでは因果関係に限定して説明する。


   ┌───────────────────┐
   ↓+                  │
「顧客の満足感」     A        「売上げ」←┐
 │ │   +              +↑   −│
 │ └───→「顧客のコミットメント」───┘    │
 │           ↑+         C   │
 │  B       「関心」 「競合からの影響」──┘
 │      +    ↑+     ↑−
「遅れがある」─→「外商のイメージ」──┘


A:満足感向上ループ(拡張)
B:外商イメージ上昇ループ(拡張)
C:競合影響なしループ(拡張)
※拡張ループでは、時間が経過すると、変数の量がどんどん増加または減少する

上図を見てほしい。「ロイヤルカスタマーへの働きかけをするこれまでにはない仕組みの構築」というプロジェクト課題に関して、関連する要素を洗い出し、因果関係を示したものである。システム思考の因果ループ図を使って描いているので、要素を変数とし、因果関係を変数間の「+/−」を使って表現している。

この課題に関連する変数には、「顧客の満足感」、「顧客のコミットメント」、「売上げ」、「競合からの影響」などがある。変数間の関係が因果関係になるが、変数が同じ動きをする「+」と逆の動きをする「−」がある。これらの枠組みで、プロジェクト課題を表現すると上図のような関係があるわけだ。

そして、この関係の中でプロジェクト課題の本質を見つけていくが、ほぼすべての要素に影響を与えている「顧客のコミットメント」、あるいは、売上げに逆の影響がある「競合からの影響」に本質があると考えられる。

ここでいずれを選んだとしても、主観であることに注意をしてほしい。

なお、この方法ではコンセプチュアル思考としては

・大局/分析
・抽象/具象

の思考軸が中心になる。


◆本質を直観的に捉える

三番目は直観的に捉えることだ。この方法は、本質を直観的に考え、それを仮説として設定した上で、仮説検証を行う方法が一般的である。

┌──────┬─────────┬──────────┬──────┐
│回数    │1        │2         │3     │
├──────┼─────────┼──────────┼──────┤
│仮説    │満足度を上げる  │コミットメントを向上│競合から守る│
│      │         │する        │      │
├──────┼─────────┼──────────┼──────┤
│検証    │期間限定で割引率を│コミュニケーションを│・・・   │
│      │上げる試行をする │増やす       │      │
├──────┼─────────┼──────────┼──────┤
│検証結果  │短期的には売上が向│コミュニケーションが│・・・   │
│      │上したが、すぐに効│売上に結びつかない │      │
│      │果がなくなった  │          │      │
├──────┼─────────┼──────────┼──────┤
│分かったこと│満足度が売り上げに│話題になった商品を競│・・・   │
│      │直結しない。コミッ│合他社から購入してい│      │
│      │トメントが問題  │るケースもあった  │      │
└──────┴─────────┴──────────┴──────┘

上図は、同じ状況で、直観的に考えたことを仮説として、実際に仮説検証の行動に移すという方法の例である。まず、直観により「満足を高める」ことが必要だと考え、そのために、「期間限定で値引き率を上げる」という試行をし、「短期的には売上げが向上したが、すぐに効果がなくなった」という結果だった。これから、「満足度が売上げに直結しない。むしろ、コミットメントの方が問題だ」という直観的な洞察を得る。そこで、コミットメントを向上することが必要だと考える。

このような繰り返しにより、「競合から守る」ことが本質だという結論に行きつく。

このように直観によって本質を見極めていくことも場合によっては有効だが、この方法ではコンセプチュアル思考としては

・直観/論理

の思考軸が中心になる。

以上の3つが本質を見極める際の代表的な方法である。
(続く)

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┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

著者紹介

好川哲人、MBA、技術士
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス代表、PMstyleプロデューサー
15年以上に渡り、技術経営のコンサルタントとして活躍。プロジェクトマネジメントを中心にした幅広いコンサルティングを得意とし、多くの、新規事業開発、研究開発、商品開発、システムインテグレーションなどのプロジェクトを成功に導く。
1万人以上が購読するプロジェクトマネジャー向けのメールマガジン「PM養成マガジン(無料版)」、「PM養成マガジンプロフェッショナル(有料版)」や「プロジェクト&イノベーション(無料」、書籍出版、雑誌記事などで積極的に情報発信をし、プロジェクトマネジメント業界にも強い影響を与え続けている。

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